玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

怪談ではない

▼今年は特に蝉の声がにぎやか。でも、夜は意外にもひんやりしている。

 

豆腐の上に、すりおろした生姜と鰹節、そこに醤油を垂らしたものばかり食べている。もうあたくし他に何もいらない。強いて言うなら、エアコンとテレビとパソコンと本と映画とアイスとゲームと、おまえいいかげんにしろや。ということでダラダラとしているうちに過ぎる夏休み。アニメ「おそ松さん」を全話観た。小中学生とは一味違う夏休みをおくりたい。

 

 

▼近所のレンタル店までぶらぶらと。歩きにくいサンダルで出たのがいけなかったのか、片道30分もかかってしまった。それにしてもニュースで見るほど「ポケモンGO」をやっている人がいない。田舎だからかな。ここらへんにはポケモンがいないのだろうか。この道路にこびりついている細長くてひからびたドドメ色のミミズ。ポケモンってこれのことかな。間違いない。

 

 

▼集まって映画を観るだけという映画部。なぜかホラー映画部にしようとする動きがある。この流れを断固阻止したい。みんなの映画部を守りたい。というか、わたしが辞めれば丸く収まるのでは?ホラー映画部として盛り上がるのでは?嫌なことに気づいてしまった。脱退の危機。

 

 

▼夏ゆえに怪談など、と思ったものの怖い話を知らなかった。何かないかと考えてみたら、友人Aからずいぶん前に聞いた話を思い出した。もう10年以上前の話だろうか。怖くはないです。

 

友人Aがお盆に田舎へ帰ったときのこと。Aの田舎は東京から車で4,5時間ぐらいの山に囲まれた田舎町で、住人はみな顔見知りというような小さな所らしい。昼の用事が長引いてしまいAの到着は深夜になってしまった。山の近くには墓地があって、Aが車で墓地のそばを通り過ぎたとき、3,4人の軍服姿の男が歩いているのが見えたという。軍服について詳しくは聞かなかったけど、第二次大戦中の日本陸軍のものなのだろう。

 

彼らが進む方向には山しかないのだが、彼らは車では入れない細い山道を上っていったという。だが、ちょっと奇妙だったのは男たちの一人が台車のようなものを押していたこと。台車の上には黒い大きなポリ袋のようなものが載っていたらしい。Aは幽霊を見たと思い、一度は車を停めたものの、怖くなってすぐにその場を離れたという。

 

ただこれだけの話なのだ。Aのことは子供の頃から知っているが、注目を集めたくて嘘をいうようなタイプではない。Aが嘘をついたことはあったかもしれないが思い出せないぐらいだ。この話をAから聞いたあと、何度もAには会っているが再びこの話をされたこともない。本人ももうまったく気にしてないのだろう。幽霊や、その手の話をAから聞いたことは他にはない。

 

そうやって考えると、Aが見たものはなんだったのか。干してある白いタオルを白装束の女と見間違えるような、恐怖心が起こす単なる見間違いがもっともありそうだし、きっとそうなのだろう。だけど台車を押していたというのが気になる。軍服なのに台車というのが時代がごちゃまぜで何か変だ。

 

本当に素直に考えるとすれば、やはり軍服姿の男たちが台車を押していたということになる。なぜ彼らが軍服を着ていたかといえば、怪しい行動をとがめられても「肝試しの準備をしていた」などと言い訳がきくからかもしれない。となると、黒い袋の中身はやはり、ねえ、死体でしょ?死体なんでしょ?死体だったらいいなあ!

 

Aに、田舎で行方不明になった人はいないか聞いたのだが、そんな人はいないという。そうかー、いないかー、安心したー、心の底から安心した‥‥。

 

あああああ!なんてつまらないのでしょう!次からは、行方不明者が出てから話を持ってきてもらいたいもの。

 

とすると、Aの見たものはなんなのか。やはり単なる見間違いで軍服姿の男などいなかったのかもしれない。それとも本当によからぬ物を埋めにいく怪しげな男たちなのか。はたまた、台車を押す軍服の幽霊ということもありうる。時代がごちゃまぜだけど、幽霊なんだからそんなルールなど守る必要はない。鎧兜でスマホ片手にマシンガンを連射する幽霊がいたっていいじゃないか。わたしはそういう人こそ応援していきたい。なにこの終わり方。