▼蝉が鳴いている。夏本番。かき氷屋には人が行列していた。暑くて日陰を選んで歩く。コンクリートの上に、猫が体を伸ばして横たわっている。ひんやりして気持ちいいのだろう。ピクリとも動かない。
きれいな顔してるだろう。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで‥‥、と思ったら動いた。勝手に殺すのやめよ。
お腹を見せて寝ている猫を見ると、その無防備なお腹をそっとつまんでやりたくなる。だが、わたしも40歳、もうそんなことはしない。39までならやっていた。人は成長する。
▼選択肢が3つあると、真ん中のものほどよく売れる
松竹梅の話を聞いた。飲食店などで同じ種類の料理でも値段が2、3種類に分かれることがある。値段が高い順から仮に松竹梅とすると、人気のあるのはいつも竹だという話。有名な話なので聞いたことがあるかもしれません。1000円(梅)と2000円(竹)のコースだけだった場合、3000円(松)のコースを加えることで、竹の売上が増加し、全体的な売上を増やすことができるというものです。実際、そう単純ではないだろうけど。
あの話の出典はどこなのだろうと気になっていた。調べてみると、どうやらイタマール・シモンソンとエイモス・トベルスキ―によって行われた実験(リンク先英語のみ)が基になっているようです。日本語でわかりやすく書いてあるものはないか探したら「コーヒーとサンドイッチの法則」(竹内正浩)という本に解説が出ていた。
カメラ選択肢 | 価格($) |
購入者の割合 実験1 |
購入者の割合 実験2 |
実験1の売上 ($) |
実験2の売上 ($) |
X(梅) | 169.99 | 50% | 22% | 8499.5 | 3739.78 |
Y(竹) | 239.99 | 50% | 57% | 11999.5 | 13679.43 |
Z(松) | 469.99 | 21% | 9869.79 | ||
合計 | 20499 | 27289 |
この実験では値段の異なるカメラから、被験者に購入したい商品を選んでもらう。実験1では、XとYの2種類から選んでもらう。このとき、XとYの人気はそれぞれ50%ずつできれいに分かれた。2回目の実験ではあらたにZという機種を追加して、3つから選んでもらう。結果はXが22%、Yが57%、Zが21%というものだった。
実験1の売上(20499$)と実験2の売上(27289$)をくらべると、実験2では約33.1%も売上が増加していることがわかる。消費者は、上下の値段を避けて真ん中のものを選ぶ傾向がある。でも、なぜ両極を避けるかはよくわからない。一番高いものを選んで「たいしたことなかった」とガッカリしたくないのかもしれないし、周囲への見栄とか、いろんな要素があるのだろう。また、中流意識が高いといわれる日本で実験すれば竹の選択率はさらに上昇するのだろうか。
これ、べつにすごくもなんともないと思うかもしれません。でも、売上ではなく利益で考えると、ちょっと違ったものが見えてくる。冒頭の松竹梅に戻りますが、これを鰻屋で考えた場合、1000円(梅)の鰻重の中身をおおざっぱに原価300円、人件費等500円とすると、利益は価格1000円ー原価300円ー人件費500円=利益200円となる。原価30%は飲食の相場なので他のコースにも適用するとして、これを2000円(竹)に適用すると、原価600円(2000円の30%)、人件費等500円、利益900円となる。
人件費等の固定費は上がらないんですよね。梅から竹に変わっても、2倍時間をかけて焼くわけでもないし、やっていることは変わらない。光熱費なども変わるわけではない。つまり固定費は同じで利益だけ増えていくことになる。松になるとさらに差が顕著になる。原価900円(3000円の30%)、人件費等500円、利益1600円。
仮に1日に100食出る鰻屋があったとします。メニューを松竹梅の3種類に増やすと下記のような差が出る。
鰻重の 種類 |
価格 |
購入者の割合 実験1 |
実験1 の売上 |
購入者の割合 実験2 |
実験2 の売上 |
実験1 の利益 |
実験2 の利益 |
梅 | 1000円 | 50% | 5万円 | 22% | 22000円 | 1万円 | 4400円 |
竹 | 2000円 | 50% | 10万円 | 57% | 114000円 | 45000円 | 51300円 |
松 | 3000円 | 21% | 63000円 | 33600円 | |||
合計 | 15万円 | 199000円 | 55000円 | 89300円 |
100食売れたと仮定し、梅の利益は200円、竹は900円、松は1600円で計算。
売上は32%増だけど利益は62%増になるのだ。もちろん高コスト商品が売れ残ったときの損害や、オペレーションの変更など、実際にはいろんな問題がある。ただ、適切な製品ラインを設定することにより利益を高めることができる。
なぜ突然こんなことを書き出したのだろう。よくわからない。
この本はまったくマーケティングなどの本を読んだことがない人にも読めるように、わかりやすく書いてあるのが良かったです。帝国ホテルが不動産業で儲けているとか、トリビアも多めで面白かった。