玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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Exif情報

▼久しぶりの大雨。今年は貯水池にほとんど降っていない。この雨で少しは水瓶がうるおえばいいけど。

 

雨といえば、作家の山口瞳は折り畳み傘を持たなかったらしい。みな傘がないのに、自分だけ得意げに折り畳み傘を取り出す顔がみっともない。そんな理由だったように思う。慎みというのだろうか、わたしにはこういった感覚が欠けている。雨の日に折り畳み傘を持っていたら、自慢げに傘を出すだけではすまず「持ってて良かったー。わたしにはスキがなかった」などとSNSに投稿しかねない。山口瞳も呆れるだろう。なぜこんな恥ずかしい人間に育ったのか。どこで道を間違えたのか。マリア様、どうかこの哀れな子羊を正しい道に導いてください。

 

 

▼新しいパターンに挑戦したが失敗した。純粋に気持ち悪い。なんだマリア様てオイ。やはり天候が不安定だと人の心も不安定になる。

 

 

▼仕事を請けている会社でコンプライアンスについてのセミナーを受講。だが時間になっても講師が現れない。講師は30分ほど遅刻してやってきた。ざっとコンプライアンスについて説明があった後、みんなでプリントを復唱させられる。

 

コンプライアンスは必ず守ります」とか、当たり前のことを大声で読まされる。久しぶりに味わう小学生気分に興奮。人はよくわからないことで興奮する。

 

で、やっぱり講師が遅刻すると駄目な気がする。講義の説得力も薄れる。どうしても、コンプライアンス守る前に時間を守れ、と思ってしまう。そのままお昼ご飯。講師の方もいらして4,5人で食べる。話はいつの間にか夫婦・恋人の信頼関係の話に。みな「うちは終わってる」とか「そんなこと怖くて訊けるか」などと、あまり相手を信頼する意見が出ないなか、講師の方は自信満々だった。

 

「うちは大丈夫です。怪しいときはいつもExif(イグジフ)情報つきの画像データを送らせてますから」と胸を張った。デジカメやスマホなどで撮影すると、機種によっては画像にExif情報というものが付加される。Exif情報の内容は、撮影した端末の機種、日時、位置情報(GPS付き端末だと記録されてしまう)など撮影環境のデータです。通常、ブログやSNSに画像データをアップロードする場合、Exif情報は削除されることが多い(自宅などの位置が第三者にわかってしまうことがあるため)。こちらで削除設定をしなくても、サーバー側で自動削除されている場合も多い。

 

講師の方は奥さんに怪しい挙動があったとき、スマホで写真を撮らせて、Exif情報が付いたまま自分の元に送らせるという。画像をSNSにアップロードさせるのか、自分の端末に直接送らせるのかはわからないけど。しかし、奥さんが送ってきたデータの座標を調べて「今日はここにいたのか」と確認する行為は、どう考えても普通じゃないような。ストーカーっぽくて怖い。信頼関係ゼロだと思うのだけど。なぜ「うちは大丈夫です」と胸を張っていえるのか。全然大丈夫じゃないだろう。むしろ「Exif情報を送らせてます」と堂々と発表するところに狂気を感じる。にこやかに笑っているのが恐ろしい。目、合わさないでおこ。

 

ちなみにExif情報を書き換えるソフトも存在するため、Exif情報が完全に正しいわけではない。奥さんは、Exif情報なんてよくわからないというフリをしながら、講師の裏をかいてExif情報を書き換えつつ遊びまわっている可能性もあるわけだ。遊びまわっていてほしい。ホストに貢ぎまくっていてほしい。謎の願望。