玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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学生気分

モハメド・アリが亡くなった。 アリ、音楽好きだったんですね。当時の人は、車ではこうやって音楽を楽しんでたのか。待てよ、と思って検索して、カーレコードプレーヤーが存在するのを確認して安心する。なんでもかんでも「これは本当か」と疑ってしまう。品のない癖が身についている。 ▼新入社員K君が「学生気分が抜けきってない」と叱られていた。人が叱られているのを聞いていると集中できない。よそでやってくれとも言えないし。仕方がないので内容を全部聞いてしまった。ヒマか。 学生気分が抜けてないというのは、ずいぶんと曖昧な言い方に思える。そういう言い方をするためには、まず学生気分の定義がなければならない。学生気分とは何か。徹夜でゲームをやったり、ノートの隅にパラパラ漫画を描いたり、学校にUNOを持って行って没収されたり、福田君が「お姉ちゃんのUNOなんです! 返してもらわないと殺されるんです!」と泣いて頼んでも返してくれなかったり、そういうことなのだろうか。具体的に何を指すかわからない。叱られている側には基本的に非がある。だから「学生気分て具体的になんですか」とはなかなか訊けない。「そういうところだ」とか怒られそうだし。 学生気分が駄目であるなら社会人気分というのは褒め言葉になりそうだ。叱る側は社会人気分で働いているはず。上司や先輩を褒めるとき、使ってみてもいいのではないか。「さすが、社会人気分ですね」などと言えば機嫌が良くなるかもしれない。もう一歩踏み込んで「先輩、さすが社畜ですね」などと言うのも良いかもしれない。どつきまわされる。グーで殴りかかってくる。社畜にはそういうところがある。 だが、社会人気分とは具体的に何か。仕事中にこっそりネットでニュースサイトを見る。外出先での打ち合わせが長引いたと言って自宅に直帰する。必要ない資料を大量に印刷してしまい、捨てると怒られそうなので裏紙にしてメモ張にするが全然減らない。書いていて思ったが、これは社会人気分ではなく社会人あるあるでは? 社会人気分がわからぬまま、ここまで来てしまった。だとすると、これからもわかるまい。わからないことの多い人生だよ、わかったときにはそんなことどうでもよくなっているだろう。などと書けば、何かかっこいいことを言った気がする。社会人気分てなんだろー? 会社のお金で備品を買って、自分のポイントカードにポイント貯めることかなー。それに間違いない。なるべく早く死ぬようにします。