玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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▼そろそろ桜も散る頃。先日、通りかかった公園でも花見が行われていた。外国人の姿が多い。外国人観光客の増加は日本のおもてなしが評価されたとか言われるけども、それとは別にテロの影響があるように思える。ヨーロッパ、中東、アフリカへ行こうと思っていた観光客が日本に流れているのではないかしら。 ▼仕事で揉めに揉めた。人は揉めるなあ。思想の問題というのは解決不可能だし、もっとも難しい。技術者のHさんは「この世にないものを作り出したい」と常々言っていた。だから、できるとわかっている仕事はしたがらない。できるとわかっているなら、その仕事は「確認」にしかすぎないのだ。誰だって、確認するより新しいものを作りたい。言っていることはよくわかる。 一方、そんなこと言わずに利益が出る仕事をしてくれよという社長の言い分もわかる。ただ、社長はHさんときちんと話し合わずに来た。Hさんが嫌いだとか苦手だからではなくて、話し合うとお互いに逃げ場がなくなってHさんが会社を出ていくことになる可能性がある。それをわかっていたからだろう。研究所ではないから、利益が出ない仕事を延々やるわけにもいかない。もっとも今は研究所もかなり厳密に成果を求められそうだけど。 Hさんのような働き方は一般企業では少し難しい。新しい試みに挑戦できる仕事ばかりではない。会社としてはHさんの技術は必要だが、本人にとっては辞めて新しい場所を探す方が幸せなのかもしれない。笑って送り出すしかないだろうか。社長とHさんは創業以来のメンバーで、ずっと同じ方向を見てやってきたように見えたけど、そうではなかったのかもしれない。どちらかがいつの間にか静かに逸れて行ったのだろうか。それとも初めから同じ方向など見ていなかったのか。桜はいつか散る。ならばせめて美しかった頃のことを忘れずにいたいものです。