玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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名簿

▼以前、お世話になっていた会社へ。会長と雑談。八十歳を超えているはずだが元気だ。もう十年以上前から、まったく歳をとっている様子がない。老人というのは不思議なもので、出会ったときから老人に思える。サイボーグなのかな。

会長は俳句の会に入っている。今年も役員になり、名簿作成などの業務がまわってきたそうである。何年か前に一度頼まれて、句会の名簿や連絡網、年間スケジュールなどを作成した。会員はみんな歳で誰もパソコンを使えない。会員の周りの人間が犠牲になって作成しているわけだ。社会のしわ寄せは弱者にくるのです。今回もまた名簿を作ってくれないかと言う。

たしか以前、引き受けたときは会員が50人ぐらいだった。全員分のデータを打ち込んだり、連絡網を作るのに苦労した覚えがある。翌年は別の人が役員となって名簿を作ると聞いたので、連絡先をデータ化して引き継ぎはしなかった。まあ、会長も次に役員がまわってくる頃には死んでいるだろうし、いいかと思ったのだ。そういうの、自分に返ってくるね。全部返ってくるね。因果応報である。今、わたしの元には150人分の会員データがある。会長、勧誘をがんばりましたね。100人も会員が増えるなんて。もう打ち込みが大変。ごっそり突然死しないものか。

会長に「去年の役員の方に連絡をとって、メールで名簿データを送ってもらえませんか?」と訊いた。だが、会長は「あいつとは反りがあわんから嫌だ。あいつに頼むぐらいなら全部手書きで名簿を作る」などと言う。子供か。歳をとれば丸くなるなんて嘘だ。歳をとれば抑えがきかず、わがままになる。なにせ、先がないもんだから怖いもんがない。やりたい放題である。結果、より狂暴化する。こうして暴走老人ができあがる。

名簿はわたしが手打ちで打ち込むことになった。ああ、最初に作ったとき、すべてをデータ化しておけば、ここまで苦労しなかったのに。ようやっと全員分の名簿データが完成した。このデータ、オレオレ詐欺の人に買っていただけないだろうか。老人のデータ、格安でお売りします。
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