玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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失敗

▼「若い頃の失敗はいくらでも取り返しがつく」といいますが、あれは、若い頃の失敗ならまだかわいげもあるから許してもらえる、だからいろいろやって失敗してもよい、そんな意味にとってました。実はこれはもう一つ意味があるのではないか。

ちょっと前に一緒に仕事をしているK君が失敗をした。それは仕事をしているなら起こりうることだし、なんとも思わなかった。でも頭にこなかったのは、わたしが二十代前半に似たような失敗をしたからかもしれない。上司や同僚に助けてもらったことも多い。自分が失敗していると「そういうこともあるよなあ」と寛容な気持ちにもなれる。寛容さを持つためには、失敗した経験があったほうがいい。

普通の人間は自分の経験を通してしか物事を見られない。だからあまり失敗せずにきてしまうと、失敗した者に対して「自分は簡単にできたのに、こんなこともできないなんてどうしようもない」という、厳しさを持ってしまいそうである。そこへいくとダメな人間てのはいい。ダメであることの数少ないメリットは、自分と比べればたいていのことが許せるという点だろう。

で、問題がなんとか収まって一段落した後、失敗したK君が言った。

「まあ、若い頃の失敗はいくらでも取り返しがつくって言いますからね」

え、自分で言う? それ周りが言うやつじゃなくて? ちょっとー、誰か包丁買ってきてー。そんな気分になりました、初秋の午後。
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