玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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サンドイッチ

▼ツナサンドばかり食べている間に9月になった。涼し。

サンドイッチといえば、ジャポニカ学習帳に書いてあったコラムを思い出す。ポーカーが好きなサンドイッチ伯爵がポーカーをやりながら片手で食べられる物を作らせたのが始まりだという有名な話。

小学生の頃、このコラムを読んだ友人の小林君が「だからサンドイッチ伯爵は偉い」と言っていた。だが、わたしは「別に偉くもなんともない」と言い、とっくみあいの喧嘩になるという。これはサンドイッチを作らせたという曖昧な記述にも原因があるように思う。

作るといっても「スライスしたパンに肉と野菜を挟み、片手で持てる大きさに」などと厳密な指示があったのかという話ですよ。「ポーカーやりながら食べられる物作ってよ」と料理人に頼んだとしたら、伯爵が発明者と言えるだろうか。発明者は料理人のほうだ。だいたい、ギャンブルがやりたいがためにサンドイッチを作らせる伯爵はどうなんだ。ただのギャンブル狂である。しかも、その料理に自分の名前を付けるという心臓の強さ。山田さんがサンドイッチを開発したとして「今日からこの料理を『山田』と呼ぼう」となるだろうか。まったくサンドイッチ伯爵にはあきれる。

小学生時代のわたしが以上のような理屈っぽい主張を展開するわけもなく、ただコラムを読んでなんだか偉そうにしている小林に腹が立ったという理由でとっくみあいになったのだと思う。よくそうどうでもいい理由で喧嘩しますね。彼とは高校時代に「大黒摩季はありかなしか」で再び対決することになる。そのときは、とっくみあいにならなかった。成長したなあ。険悪にはなったけど。

で、サンドイッチの歴史などを読んでいたら、実はこのサンドイッチ伯爵の話は現在では正しくないようなのだ。wikipediaの信頼性はあまり高くないが、そもそもパンに具を挟んで食べる食べ方は世界各所(古代ローマのオッフラ、インドのナン、中東のピタ、メキシコのタコスやブリート等)で古くから自然に発祥したとある。

サンドイッチ伯爵もギャンブル狂というより、海軍大臣としての仕事が多忙のためサンドイッチを作らせたとある。ああ、ギャンブル狂のほうが面白かったのに。しかしですよ、ギャンブル狂であると世間体が悪いから、海軍大臣説を子孫がでっち上げたということもあるのではないか。

そもそもサンドイッチ伯爵とサンドイッチがたいして関係がないとすると、小林君とわたしのとっくみあいはなんだったのか。小林君がこの話を聞いたとき、どんな気分になるだろう。

なんとも思わないと思います。
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