玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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体育会系

▼一緒に仕事をしていたOさんという女性が辞めた。Oさんはショートカットで少年のような雰囲気の女性だった。彼女と組むとき、やや思いつめた表情で「わたし、同性愛者ですけど大丈夫ですか?」と言われたのを憶えている。以前に、同性愛者ということでトラブルがあったらしい。

彼女が同性愛者であることはわたしとは関係ない。彼女が、栗ごはんにしか性的関心を抱かなくても、仕事に支障がないならばそれでいい。そもそも、わたしにことわることなど何一つないのだ。

Oさんとの思い出は一つある。一緒に昼ご飯を食べた帰り、エレベーターを待っているときにOさんはポツリと「腹筋が割れているんです」と言った。触ってみろと言うので、服の上からお腹を触れば、かなり硬い。

「おー、鍛えてるね。すごいすごい」と感心した。するとOさんは気を良くしたのか「パンチしてみてください」と言う。最初、軽く叩いていたが「もっと! もっと!」と言うので、やや強く叩いた。「そう! そう! 本気で!」などと言われ叩き続けてたが、はたから見れば、おっさんが若い女性のお腹をボスボス殴っていることになる。周囲の目が気になる。

エレベーターに乗ると「じゃあ、今度はわたしの番ですね」と笑顔で、わたしの腹を殴ってきた。いやいや、今度はわたしの番とかおかしい。自分が殴れと言うから殴ったのに。体育会系ギャグ、嫌だわー。

そんなOさんは、独立して輸入の仕事を始めるという。Oさんのガッツがあれば、きっとどこでも成功するだろう。彼女に伝えたいのは、わたしに会ったとき、挨拶代わりに脇腹にパンチを入れるのはやめろということだ。あれはただの暴力行為ということに早く気づけ。それがあなたへのはなむけの言葉です。
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