玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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卒業式

▼打ち合わせの予定が延期になった。約束の相手が、お子さんの卒業式に出るので都合が悪くなった。今は父親が小学校の卒業式に出るというのは珍しくないのかもしれない。わたしが子供の頃は稀だったと思う。母親はともかく、仕事を休んでまで来る父親は記憶にない。

親と子の距離が今より離れていたように思うし、子供の側としても友達が大事で特に親について考えることがなかった。考えないで済むということが庇護されている証なのかもしれないけど。

卒業式に出たAさんは特に子供好きには見えない。世間話でそんな話題になったこともない。どちらかというと家庭のことは奥さんに任せっきりの仕事人間かと思っていたのだ。Aさんにそのことを訊いてみると、どうにも答えづらそうだった。

いつものAさんとは違い、歯切れが悪くて要領を得ない。Aさんの話から推測すると、どうやら子供の卒業はどうでもよい。子供は子供で勝手にやっているらしいので。ふだん家族をほったらかしにしているので「家族のことを気にかけてますよ」という態度を奥さんに対して見せておく必要性からの出席、ということらしい。わたしなどにはわからない高度な政治的駆け引きが行われている。こういう人が外務大臣などをやるといいのではないか。そして家庭の平和は守られるのです。

Aさんは来月の中学校入学式も出席するらしい。入学式出席で家庭の平和が守られるなら安いもの。なにかとてもためになる教訓を聞いた気がする。で、被害をこうむるのは一緒に仕事を請けているN氏だろう。Aさんの家庭のために死んでほしい。