玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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難問

▼北海道がものすごい雪に。広島や徳島でも雪が降っている。ひょっとして東京も降るかもしれない。午前に打ち合わせがあるので、かなり早く家を出た。これぞ、できるビジネスパーソンの鑑ではないか。わははは。そんで雪は降らず、意味がなかった。ヒマである。

わたしは会社の鍵を持っていないので会社に入れない。会社前でボーっと立っている。手元に、会社をつぶしてしまった社長の手記があったのを思い出す。読み始めたら、債権者会議で吊し上げられておる。ああ、もう朝から具合が悪くなります。虚ろな気分で落ち込んでいたら、隣席のTさんがやってきた。ずいぶんと早い。

聞けば、化粧ポーチを会社に忘れてきたので、誰もいないうちに出社して化粧をしたかったという。ほとんどノーメイクに近いそうだけど、正直なところいつもとそんなに変わらないように見える。こういうとき、なんと言えばよいのだろう。

「変わらないね」と言えば、化粧をしてもしなくても同じと言っているようだし「別人みたい」と言うと、それはそれで問題がありそうだ。掛ける言葉が見つからない。トイレにこもっていたTさんが化粧を終えて戻ってきた。

どう言えばよいのか考えたが、一切化粧について触れないのが正解ではないか。そのまま雑談をしようとしたら「どうですか?」などと訊く。なぜ訊くのだ。誰も得をしない。何が正解なのか。さんまさんのように「目がつぶれる!まぶしい!」などと言うのが正解だったのかもしれない。

でもわたしは「全然大丈夫だと思います」と言ってしまった。自分でも何を言っているのかわからない。Tさんは明らかに不満そうで、目が「大丈夫って、どういうことだオイ」と言っている。仕事上、久しくピンチに陥ってなかったが、まさかこんなところでピンチになるとは。

「いや、大丈夫っていうのは‥‥、すごくいい!みたいな意味で‥‥」
「そんなわけないでしょう」
「うーん、たしかにそんなわけないなー。あ、口紅の色いいね。口紅っていくらぐらいすんの?」
「どうしてそんなに話逸らすの下手なんですか?」

救いがないわー。うまく立ち回りたい。口先だけで生きていきたい。
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