玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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陰徳

▼お世話になっている会社で仕事。久しぶりに泊まる。朝、起きるとKさんという社員だけが出社していた。まだ始業の30分以上前である。Kさんは全員の机を拭いているようだった。わたしは毎日この会社に行くわけではないが、いつも机が奇麗なのはKさんが水拭きしてくれていたからだろう。

朝のゴミ集めは社員全員でやるのだけど、Kさんは一人のときはゴミまでは集めない。みんなが来てから一緒にゴミを集めている。ゴミは机を拭くこととは違って、片付けられたのがすぐわかってしまう。すると、気を遣って早く来なければと思う人もいるだろう。誰にもわからぬよう机を拭くだけに留めている。拭いたとわからせないのが偉い。忍者のようである。お掃除忍者。

中国の思想書淮南子」には「陰徳」という言葉がある。善いことは隠れてこっそりせよということである。わたしが仮に人の机を水拭きしたら、わたしの名字が光の加減で浮き出るように拭いてしまう。机を拭いたのは、そうです!わたしです!と大声で宣伝したい。自分の手柄を自慢したいのが当然なのに、Kさんの見事さに頭が下がる。

あれでしょ。ビジネスパーソンとやらのブログはこんな感じでよろしいんでしょ。故事とか好きな戦国武将とかライフハックとか入れながら書いちゃうやつでしょ。役に立つことなど一切書かずに続けていこう。


▼そういえば、以前仕事を頂いた会社では朝の訓示がすごかった。全員で社訓を唱和し、突撃隊長のような人が「おまえら、戦国時代の厳しさはこんなものじゃないぞ!」などと怒鳴っていた。「おまえだって、戦国時代は生きてないだろ」とか誰も言わないのが偉い。これは年越しにダウンタウンがやっている「笑ってはいけないブラック企業」とか、そういうシリーズなのかと思ってしまう。

その人は戦国時代や侍が好きで、わたしも話を聴くのが楽しかった。「侍はなあ、24時間命がけなんだよ!それに比べておまえらは甘い!侍のように24時間働け!」などと言っていた。労働基準法は斬って捨てられたのです。

ちなみに江戸時代の話ですが、侍は朝四つ(午前10時頃)に出仕し、昼八つ(午後2時頃)に帰宅したようなので実質4時間しか働いていない。その間に昼食をとるから、実際の労働時間はもっと少なかったようです。部署によって違いはあるから一概には言えないのですが。ホワイト企業だなー。切腹とかありますけど。
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