玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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▼映画の感想ばかり書いていた。映画はどんなにつまらなくても、一応観ることはできる。B級映画ばかりを好んで観る人たちもいる。他のジャンルでもこんな人たちはいるのだろうか。

まずい物ばかり食べたがる人、「てにをは」がおかしい文章を読みたがる人、下手な音楽ばかり聴きたがる人、どう考えても頭おかしい気がする。

映画の感想」はこちらに書いております。


▼知り合いから連絡があった。漫画を描いたり、地方に移住しようとしたり、みないろいろやっている。大学時代の知り合いMの話も聞いた。

Mは友人の知り合いなので、わたしは挨拶を交わしたことがある程度であまり良く知らなかった。大学時代、二限の授業に行く途中だったと思う。駅近くの公園でMを見かけた。Mは三輪車ぐらいの大きさの柴犬を連れていた。Mもわたしも話す気はなかったが、交差点で信号待ちをしていたわたしに犬が寄ってきたのだ。

挨拶を交わした後、Mはぎこちなく飼い犬を紹介した。
「これ――、犬」
柴犬はわたしの靴をクンクン嗅いだ後、額を靴にこすりつけた。
「人懐っこいんだね」
「うん。この犬、バカだからさあ――」

Mは何かを言いかけて躊躇したようだった。わたしが授業に遅れると、気を遣ってくれたのかもしれない。Mが何を言おうとしたのか気になって、その日の授業はさぼって話を聞くことにした。

Mが連れていた犬は捨て犬で、わたしたちが話していた公園の近くで保護されたらしい。それをMの姉が、保健所で処分される前に貰い受けてきたという。

「この公園で遊んでいると、急にピタッと動かなくなって、北の方を向いてずっとそのままでいるんだよね。無理に引っ張って行かないと、本当にずっとそこにいるの」
「前の飼い主を待ってんのかね」
「たぶんな‥‥。思い出すんだろうなあ。だから、この公園あんま来たくないんだよ。でも、こいつバカだから、こっちに来たがってグイグイ、リード引っ張ってくから、仕方なくてたまに来るんだけど」
「ああ、それで今日も来たんだ」
「うん。前に来たときも、同じ方向見て動かなくなっちゃって。また、捨てた飼い主のこと思い出してんのかなと思って。もう迎えに来ないのにバカだなとか思ってたら、ちょっとかわいそうになって、こう‥‥、しゃがみこんだのね」

Mははっきりとは言わなかったが、涙ぐんで少ししゃがみこんだということらしい。

「そしたら、こいつ、心配したのか俺の顔をペロペロ舐めるんだよね。だから、俺はこいつだけは裏切らないでおこうって‥‥、まあ、そんなことがあったんだけどさ」と照れ臭そうに笑った。犬は甘えるようにMの足にまとわりついていた。

そんなMだったが、大学時代には三股を掛けて女を裏切りまくっていた。犬は裏切らなくても人はどんどん裏切っていくスタイル。M、元気だろうか。心温まる話だなあ。

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