玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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カンパン

▼災害が多い年である。土砂崩れが起きたり、御嶽山が噴火したり、時季外れの台風も来た。

備蓄してある非常食を確認すると賞味期限が切れていた。新しい物を買って古い物は食べる。二年ほど賞味期限が切れていたが平気だろう。二年など誤差のうちである。ワインならば寝かせれば寝かせるほど味が出る。などと、下戸なのに言ってみました。

で、食事の量が足りないとき、補助的に古いカンパンを食べていたが、さすがに飽きた。もう食べる気がしない。しかし捨てるのは惜しい。まだ開けてないカンパンが何缶かある。

友人夫婦の家にお邪魔した。友人夫婦の子ター坊(小学5年)にカンパンを自慢する。ター坊はカンパンを知らなかった。「これはとても高級な『カンパン』という食べ物だ」と言って、ター坊に一つ手渡す。口に入れたター坊は、たいして美味くもなさそうな顔をする。そりゃそうだ。カンパンである。美味いわけがない。

ター坊の父が「これは大人にしかわからない味だからなあ。おまえにはまだ早いだろ」などと適当なことを言う。さすが、適当なことを言うためだけに生まれてきた男よ。

ター坊はもう一つカンパンを口に放り込む。カンパンの味を噛みしめているのか、難しい顔をして「なんだか‥‥、高貴な味がする‥‥。消しゴム焼いたみたいな」と言う。高貴て。焼いた消しゴム食べたことあんのかな。

カンパンを食べ終わったので、高貴な家を後にした。


▼ター坊から連絡があった。「うちも非常食、ネットで注文したよ。来週までに届くから一緒に食べよー」などと言う。「非常」の意味を根本から否定してくるのだった。
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