玉川上水日記

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映画「折れた矢」

折れた矢
Unbowed / 2011年 / 韓国 / 監督:チョン・ジヨン / 裁判

法を守らないのは判事でした‥‥。
【あらすじ】
職場復帰を求めた裁判に負けたキム・ギョンホ(アン・ソンギ)。職場の解雇も不当、裁判も不当、控訴審は棄却。キーッ!となって判事をボウガンで脅してみたよ!

捕まりました。


【感想】
韓国で2007年に実際に起きた石弓事件が基になっている。この「基になっている」というのが厄介で、どれぐらい忠実に再現されているのだろうなあ。もし映画のとおりだとすれば韓国の法曹界は大変なことになっている。証拠は捏造し放題、裁判は判事の独裁で滅茶苦茶である。

犯人の教授キム・ギョンホは、不当な解雇や判決に強く抗議する。頭の回転が速く、隙のない論理を組み立て、判事や検事を攻撃する。納得がいかないことがあれば味方の弁護士だろうが対立を恐れない。前任の弁護士はクビにされてしまう。

弁護士事務所の経営難により、キム・ギョンホの弁護を嫌々引き受けることになったパク・ジュン(左、パク・ウォンサン)。「めんどくさい被告で嫌だなー」と思っています。そうです。ウルトラめんどくさい人です。

教授は、裁判中に判事や検事の告発までしようとする。法の専門家である彼らも、言い返すことができないぐらいにしっかりと法律を読み込んでいる。ビシビシと判事や検事を追い込んでいく法廷劇は小気味良い。あ、あれ、あんまり弁護士ちゃんが役に立ってないような‥‥。がんばれ、弁護士ちゃん!

だが「弁護士はサービス業だから、わたしのサポートをすればいいんだ」と言う教授に、困惑する弁護士。「俺たちってチームじゃないの‥‥」という。弁護士の困りっぷりが面白かった。厄介な依頼人ですよ。この人とうまくやっていくのは大変そう。近くにいたら、あらゆる事を指摘してきそうで怖い。謝るしかない。

被告側は、被害者の血液と、証拠品(被害者の衣服)についた血液が本当に同じものか疑い、血液鑑定を申請する。だが、判事はこんな基本的な事実確認も認めずに一方的に裁判を終結させてしまう。

司法の権威と同僚を守るためなら、捏造上等という姿勢がすごい。検察も医者もグルで犯罪に加担している。韓国は上下関係が厳しいが、そういった事情も犯罪の秘匿に関係しているのだろうか。韓国では約300万人の観客を動員する大ヒットとなったそうです。しかし、こうまで騒がれても、判事は責任追及されなかったのだろうか。不思議。

で、もう一つ不思議なのは教授の態度である。行動の端々から法律を遵守する姿勢が伝わってくる。そんな人がボウガンを持って判事を脅す(裁判は不当だったと自白させるため)というのが解せない。そもそも、脅迫して得た証拠には証拠能力がないと思うのだけれど。それは韓国でも同じだろう。教授がそこに気付かないわけはない。そんなことは関係ないというほど激昂してしまったのだろうか。

あと、韓国映画に独特のコメディ部分が気になる。真面目な話なのだから、真面目に撮ってもいいと思うのだけれど、ちょっとした笑いを差し込んでくる。映画を重くさせないようにという配慮かもしれないが、なんだかよくわからないことになっているよ。これは好みでしょうかね。

DVD特典を観ると、教授役を演じたアン・ソンギは、この仕事をノーギャラで引き受けたという。作品が作品だけに大企業のスポンサーも付かず、低予算作品にせざるを得なかったそうですが結果は大ヒットというのも面白い。韓国人の感想を聞いてみたい作品です。


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