玉川上水日記

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映画「クロッシング・デイ」

クロッシング・デイ
What Doesn't Kill You / 2008年 / アメリカ / 監督:ブライアン・グッドマン / ドラマ


更生できる人、できない人。
【あらすじ】
サウスボストンのストリートで兄弟のように生きてきたブライアン(マーク・ラファロ)とポーリー(イーサン・ホーク)。悪いことを繰り返す人生から抜け出すことができるのか。

【感想】
DVDのジャケットには銃を持つ主人公たちと、特殊部隊が車を撃っている派手な場面が映っている。えーと、この映画にはそんな場面はいっさい出てきません。特殊部隊はどこにもいないのでした。どういうこと。映画はもっと地味で、貧困から抜け出せずに犯罪を繰り返してしまう人々を描いている。

主人公のブライアン(左)と、街を仕切るボス(ブライアン・グッドマン、右)。マーク・ラファロはアベンジャーズでハルクを演じてた人ですね。そのせいか悪役をやっててもちょっと知的に見える。右側のブライアン・グッドマンは迫力がありますね。なにせ本物ののワルである。この人の半生を基にこの映画は作られている。だから、主人公の名前がブライアンなのだ。

罪を犯した人を悪人と断ずるのはたやすいものの、社会に再び出てきたとき、やり直す手段がなければ、また同じことをやってしまう。あまりにも椅子の数が少ない社会に見える。

刑務所から出た二人は現金輸送車を襲うことを計画する。しかし、ブライアンには家族がいるので計画の参加をためらう。ブライアンは家族思いなんですよね。子供も奥さんも大事にしようとする。家族の存在が計画を思いとどまらせるというと、何かすごくいい映画のような気もする。

だけど、ちょっと違和感があったのは、この人は他人に対しては簡単に暴力を振るうし、現金輸送車を襲うことに関してもなんとも思ってない。ただ、捕まるリスクを考えると、息子に会えなくなってしまうのでやらないというだけなのだ。強盗が悪いことだからやめようというわけではないんですよね。

善悪の価値観において、基本的な部分が欠落しているように感じる。身内や仲間は守るべきものだが、世間に対しては何をしてもいいというか。ただ、家族を養うためという動機があるから、犯罪に走ってしまうのも理解できる。一般人の価値観と離れているかというと、そんな違うものじゃないんだという。「悪人」というのは「悪人」を遠ざけておきたい人たちが引く境界線であって、本当は善も悪もなくて、とても曖昧なものなのかもしれない。いいこと書きましたよ、これは。

原題の「What Doesn't Kill You」はニーチェの言葉を省略したもの。元は「What doesn't kill you makes you stronger.」(あなたを殺さなかったものがあなたを強くする)苦難が人を強くするということでしょうか。

面白いセリフも多いんですよね。刑務所にいたブライアンが妻への手紙で刑務所にいる人(恐らくは自分も含めて)を次のように評している。「ここにいる人たちは、入れ墨や筋肉で弱さを隠している」

なかなか含蓄のあることを言うのです。それとこれとは別で、悪いことはするぜという。現金輸送車を襲う計画も立てちゃうぜという。今ならギャオで無料で観られます。


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