玉川上水日記

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映画「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命
The Place Beyond the Pines / 2012年 / アメリカ / 監督:デレク・シアンフランス / ドラマ

こんなはずじゃないのに‥‥。思うように生きられないもどかしさ。
【あらすじ】
天才的なバイクテクニックを持ちながらも、移動遊園地のバイクショーでその日暮らしを送るルーク(ライアン・ゴズリング)。野心的ながらも正義感の強い警察官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)。対照的な二つの家族の物語。

【感想】
この映画は本当に良かったですね。話が地味で暗いし長いしで、まったくヒットしない気もするけど。わたしは地味で暗い話もけっこう好きなのだ。人が大勢死ぬ話も好きだ。不穏なことを書くなという。ここ半年の中で一番好きな作品ですね。

ライアン・ゴズリング、すごい体である。「ラースと、その彼女」に出ていたときはポヨンポヨンした感じだったがマッチョに。しかも全身タトゥーである。向こうから歩いて来たら、全力で逃げたい。

いかにも荒くれ者という雰囲気のルークだが、自分に子供がいることを知らされ、家族を幸せにしようと決意する。はじめて自分以外の人間を大事にしようと思ったものの、やり方が無茶苦茶なのだった。銀行強盗で稼ぐという‥‥。あかんで。

愚かで貧しくて這い上がるのに必死で、間違った方法を選択してしまう。それを弱さとか愚かさという言葉で切り捨てるのは簡単だが、笑う気にはなれない。同じように、貧しい人々が誤った選択をしてしまうというのはケン・ローチ監督の作品によくありますが、ケン・ローチ作品は社会構造を糾弾しているように見えるが、デレク・シアンフランスの作品は社会構造というより、どうやってもどん底から抜け出せない哀しさをより強く描いているように見える。

一方、警察の腐敗を見逃せない正義の警官エイヴリー。聞かぬフリをする上層部。エリートにはエリートの悩みがあるのです。青年から中年までをブラッドリー・クーパーが演じてますが、見事に雰囲気が変わってますね。

汚職警官役にレイ・リオッタ。迫力ありすぎる。警官というか、ほぼマフィアである。怖くて目を合わせられないエイヴリーさんであった。

一か所とても印象的な場面があった。エイヴリーは強盗犯ルークを射殺してしまう。やがてエイヴリーは、ルークに自分と同じ一歳の子供がいることを知る。事件は解決したが強奪された金は行方不明だった。ルークが強奪した金を、腐敗した警官たちが奪い取ろうともくろむ。ルークの恋人だったミーナ(エヴァ・メンデス)の家に警官たちが押し掛ける。赤ん坊が寝ているベッドに金が隠されているが、赤ん坊をどかすとき、警官の一人がエイヴリーに子供を抱かせる。

エイヴリーには同じ年齢の子供がいるし、その子供の父親は自分が射殺している。腐敗した警官たちの無神経さが、とても残酷だった。この場面のブラッドリー・クーパーの表情が痛ましい。やるせない気持ちになりました。

15年の時が流れ、二人の子供は偶然に出会う。ルークの息子(デイン・デハーン、写真右)の繊細な鋭さが良かった。

原題「The Place Beyond the Pines」(松並木の向こうの場所)の松並木は映画の最後に出てくる。希望に満ちたとは言えないが、希望を含んだ終わり方で安堵した。複雑に絡み合った二つの家族の物語であり、ごく当たり前に幸せに生きることの難しさを見せられた思いがしました。お勧めですが、楽しくはない映画。

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