玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

映画「ブロンソン」

ブロンソン
Bronson / 2008年 / 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン / 実在の人物を基にした映画


暴力は手段か目的か。
【あらすじ】
イギリスの服役囚チャールズ・ブロンソン(本名マイケル・ピーターソン)の伝記映画。「有名になりたかった」という動機で郵便局を襲撃。収監された刑務所では看守に暴力を振るい続け、刑務所をたらい回しにされること120回。34年の刑務所生活のうち30年を独房で過ごす。いまだ服役中。

【感想】
どんな悪辣で残酷な犯罪者でもある程度、動機を理解することはできる。でもブロンソン(トム・ハーディ―)は、本当に何を考えているかわからない人である。

とりあえず、顔が面白いのだ。

困り顔も、暴れ顔も面白い。

刑務所で看守に暴力を振るうが、当然何人もの看守におさえつけられてボコボコにされる。それでも看守に戦いを挑んでいく。

人間が暴力を用いるときは、暴力をとおして自分の望む状態を実現させようとする。目的は金なのか性欲なのか権力なのか、他にも動機はあるだろうが、ただ暴力を振るうことは少ない。

ブロンソンは、ただ暴力を振るっているのである。そこが面白いというか変というか、迷惑な人だよ。ブロンソンにとっては暴力とは「何かを実現するための手段」ではなく「暴力を振るうことこそ目的」なのだろうか。楽しいのかもしれない。

だから、精神病院で彼に対して親密な態度をとった患者や、刑務所で絵を描くことを勧めてくれた人間にも暴力を振るったのかもしれない。彼にとって暴力は楽しいことなので、暴力を友好的な人間に用いても、さして問題ないという解釈なのだろうか。やはり、つくづく迷惑な人なのだった。

理解不能な人間が現れたとき「幼少期の不幸な生い立ち」とか「両親の愛情不足」とか、世間はさまざまな理由を付けたがる。ブロンソンは特に親の愛情が不足しているようにも見えない。生い立ちが格別不幸だったようにも見えない。理由はないのかもしれない。純粋に暴力に憑りつかれた人というか。ものすごく迷惑である。隣近所に越して来たら、全力で逃げるね、わたしは。

「好き嫌いが分かれる作品」という言葉がありますが、まさにこの作品がそうである。監督は「ドライブ」で名を挙げたニコラス・ウィンディング・レフン。不思議な作品であり、怪作といってもよい。あと、顔芸が面白い。


JUGEMテーマ:映画