玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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怒る人

▼友人Mから電話があった。ちょっと面倒なことに巻き込まれてしまったという。困っている人がいるとウキウキする。なるべく人には困っていてほしい。そんな人の話を聞いて、さも同情している風に「ほー、大変だねえ」などと高見の見物をきめこみたい。

で、友人Mの話を聞いた。彼の勤める職場には倉庫がある。倉庫に小学生たちが忍び込んで、置いてある物をいろいろ散らかした。Mは小学生たちを叱って、散らかした物を片付けさせたという。小学生たちは素直に片付けをした。Mは美味しいお菓子があったのを思い出した。小学生たちにお菓子を上げて「もう倉庫に入ってはいけない」と言い含めて、子供たちを帰した。その場は何事も問題なく済んだ。

何時間かした後、先ほどの子供の親の一人が怒鳴り込んで来たという。おや、ちょっと面白くなってまいりました。ワクワクした。これは噂のモンスターぺアレンツではないか。モンペではないか。がんばれ、モンペ。Mをやっつけるのです。

で、怒鳴り込んで来た母親が言うには「賞味期限を過ぎた菓子を子供に上げるとはどういうことか」と怒っているらしい。ちょっと手が付けられないぐらいに怒っている。それでMは、その母親にわたしの携帯番号を教えたという。え、おまえが何を言っているのか、さっぱりわからんのだけど。どういうことだ。

話はだいぶ飛ぶ。わたしの伯父の家の近くには、お菓子のアンテナショップがある。メーカーが試作品を置き、好評ならば発売が決まる。伯父はアンテナショップの経営者と親しいらしく、タダ同然で商品を買ってきたり、もらってきたりすることがある。それをわたしにくれることもある。ゴールデンウィークに伯父と会い、珍しいお菓子をくれた。

ただ問題なのは、そのお菓子が賞味期限を大幅に過ぎていたことである。でもお菓子自体は問題なく食べられたし味も良かった。発売前の製品なので珍しさもあった。わたしはそのお菓子を「賞味期限が過ぎている」と断った上で、友人たちに上げたのだ。友人Mにも上げていた。

つまり、わたしが上げた賞味期限切れのお菓子を、Mは倉庫に忍び込んだ子供に上げてしまったらしい。その母親は「賞味期限切れのお菓子で子供がお腹でも壊したらどうするんだ」と怒っている。で、母親の剣幕に恐れをなしたMはわたしの携帯番号を教えてしまったという。おまえ、なんてことを。テロではないか。

でも、よく考えてみると、怒鳴り込んで来た母親というのはちょっとおかしいように思う。ふつうなら子供が無断で倉庫に忍び込んだことをまず謝罪すべきだ。その上で、「面識のほとんどない人から食べ物をもらうというのはちょっと」と指摘するならわかる。極端なことを言えば毒でも入っていたら大変である。

だから賞味期限切れについて怒るよりも、見知らぬ人が食べ物をあげてしまったことを問題にしたほうがいい。賞味期限切れなら、せいぜいお腹を壊す程度である。もっとも、そのお菓子を食べてもなんともないし、子供はべつにお腹を壊してもいないという。だいたい、話のわかる人間ならば、最初からMのところに怒鳴り込んでこない。

で、こんなことをブログに書いているのだから、当然解決済みなのだとお思いでしょう。なんも解決してない。先ほどまでに、知らない番号から、わたしの携帯に16回の着信がある。ほんと怖い。絶対なんか怒られる。わたし、悪くないけど。ひょっとしてお菓子のお礼ではないか。美味しいお菓子ありがとう!みたいな。

ないわー。絶対ないわー。なんかよくわからん超理論で怒られる未来しか見えない。とりあえず友人Mに、その母親に「お菓子を配った人は、お菓子にあたって死んだ」と伝えてほしいとメールを打った。
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