玉川上水日記

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映画「レ・ミゼラブル」

レ・ミゼラブル
Les Misérables / 2012年 / イギリス / 監督:トム・フーパー / ドラマ


なぜ歌うのか、だって上手なんだもの。
【あらすじ】
ミュージカル「レ・ミゼラブル」を映画化したミュージカル映画。1本のパンを盗んだ罪で19年服役、仮出所後も世間の風は冷たく、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)はすっかり人間不信になっていた。み~ん~な~、大嫌いだ~♪(ミュージカルなので歌う感じで)。

【感想】
戦前は修身の教科書にも載っていたという「レ・ミゼラブル」。修身というのは道徳でしょうか。この大作は読んでいなくても、どこかで話を聞いたことはあるかも。

仮出所後、放浪中のジャン・バルジャンは司教の館に泊めてもらう。だが、貧しさから銀食器を盗んでしまう。館を抜け出したものの、憲兵に荷物をあらためられ、司教のところから盗んだと白状する。憲兵に引きずられてやってきたジャン・バルジャンを見た司教は、銀食器は彼に上げたものだと言う。それどころか、これも上げたのに忘れていっただろうと、銀の燭台2本を与えるのだった。キャー、司教様、かっこいい!

改心したジャン・バルジャンは真面目に働いて市長になるのです。そんなお話。

で、「レ・ミゼラブル」そのものはいいとしてミュージカルなのですよ。ミュージカルを今まで観てこなかったのは「なぜ歌うのか」という問題が解決できなかったからである。劇中に突然「なぜならば~、それは、おまえを愛しているからさ~!」とか歌い出してしまうのがよくわからなかった。歌わなくてもいいではないか。

あと、わたしにはミュージカルは理解できまいという変な自信もあった。ところがですね、この「レ・ミゼラブル」良かったんですよね。普通ならば、突然歌い出したり、自分の感情をはっきり言葉にのせてしまうというのは嫌悪感をおぼえるのに、ちっとも嫌な気持ちにならない。歌うことによって映画が中断されることにもならない。

原作中で「ブルドックのような顔つきの男」と言われるジャベール警視(ラッセル・クロウ)。たしかにラッセル・クロウはブルドック顔。そこで選ばれたのかなあ。顔だけじゃなくて歌もいいんですよねえ。なんて歌の上手いブルドックでしょう。

原作を読んだのはずっと前なので、なぜジャベールが自殺したかを忘れてしまった。この映画では自殺の原因がわかりにくい。ジャベールにとって法は絶対である。ジャン・バルジャンがどんなに立派な人物になっても、過去の犯罪を見逃すことはできない。しかし、彼を逮捕することが本当に正しいことなのか、法律が完全なのかジャベールは悩む。結果、板挟みになって自殺ということになってしまったのだろうか。己の信条に殉ずるという人間は、物語の中でしか見かけることはなくなったように思う。こういった不器用さにも心打たれますね。

腐敗した王政政府を打倒すべく決起したパリ市民たち。六月暴動の場面で流れる「民衆の歌」(Do you hear the people sing)はとてもすばらしかったです。

ただ、少しばかりあらすじがわかりにくいように思いました。日本人にとって忠臣蔵は常識でしょうから、あらすじが適当でも話はわかると思います。同様にレ・ミゼラブルはヨーロッパの人にとっては常識なのでしょう。この映画でも、あまりあらすじを説明しないというか、「それぐらいはわかっておいてよね」ということかもしれない。すまぬ。

でも、「レ・ミゼラブル」を読んだことがなくても楽しめると思います。わたしのように、ミュージカルなんてどうせわからないだろうという人にこそ。


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