玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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将来

▼友人夫婦の家で忘年会。友人夫婦の子ハナちゃん(小学5年)と話す。周りから「将来、何になるの?」と訊かれて「看護師」と答えていた。本心なのだろうか。子供の頃なんて、何にもなりたくなった。なぜ大人はそんなことを訊くのか不思議だった。おそらく大人は人生が決まっていて、もう何にもなれないことをわかっているから、子供に夢を託したり、自分を重ねたりするのだろうと推測していた。一種の迷惑行為ともいえる。

ハナちゃんは、看護師と答えれば褒めてもらえるから、そう答えているように見えた。本当のところは何を考えているのかわからない。なんとなく答えているうちに本気になるということもある。

しかし、よりによって看護師とは。わたしは反対だ。なぜそんな無難なことを。海賊とか、オレオレ詐欺の人とか、怪しいNPO法人を立ち上げて名義貸しの料金だけで生きていくとか、いろんな答えがあるはずなのに。よりによって看護師という文句の付けようもない職業を答えるなんて。今からそんなことでは将来が思いやられる。

やはり大人の側が無意識に安定した答えを求めてしまい、賢い子供は敏感にその雰囲気を嗅ぎとって無難な答えを出してしまうのだろうか。「もっと攻めてほしい」と、ハナちゃんに言ったところ「攻めるってなに?」と訊き返される。

大学時代に学内のミスコンで優勝し、その勢いでアナウンサーになって、バラエティ番組で半分タレントみたいな活動をしつつ、最終的にはプロ野球選手と結婚。出産後は子供服のブランドを立ち上げる。どうだ、こういうのはどうだと訊いたところ、「そういうの駄目だよ‥‥。女性差別だよ」と、諭された。小5に諭された。

差別というか、ちょっとふざけただけなのに‥‥。ああ、いつからハナちゃんは、そんなに大人になってしまったのか。べつの友人夫婦の子であるター坊(小学4年)は「お菓子のおまけを作る人」とか「消防車」(消防士ではない)とか「3DS」(ゲーム機)とか、言っているのに。考えていることがよくわからない。珍獣である。

ハナちゃんは大人への階段を駈けあがる一方で、ター坊はものすごい速さで降りて行ってますけど。けっこうな速度で転がり落ちている。最終的に人ではなく車やゲーム機になりたがっている。ゆけゆけター坊、そのまま突き進んでほしい。
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