玉川上水日記

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映画「アウトレイジ ビヨンド」

アウトレイジ ビヨンド
2012年 / 日本 / 監督:北野武 / 暴力、犯罪


怒鳴って爽快!スッキリ爽やか!
【あらすじ】
ヤクザの騙し合い、怒鳴り合い、殺し合い。

【感想】
前回の「アウトレイジ」は、たけしが考えた面白い殺し方ベスト10!という感じでしたが、続編の「アウトレイジ ビヨンド」は、濃いキャラの掛け合いや、騙し合いが面白い。

関東の暴力団 山王会の勢力が大きくなりすぎたため、マル暴の刑事片岡(小日向文世)は関西の花菱会をけしかけて抗争を起こそうとする。片岡は、同僚には「山王会を潰す方法をいつも考えてる」というのだけど、揉め事が起きるのが面白くてケンカをけしかけてるようにしか見えないんですね。刑事なのに困った人だよ。片岡の悪魔のような動き方が良かったですね。

今回は関西のヤクザが出てくるのですが、花菱会若頭の西野(西田敏行)と中田(塩見三省)が抜群にすばらしい。アウトレイジは、ふだんヤクザをやりそうにない人をキャスティングしていますが(白竜、中野英雄、菅田俊などは除く)、みんな本当にそれらしく見える。あと、緊張感のある場面でニヤニヤさせられてしまう。もう、顔がねえ、面白い。

特に中田の顔が悪すぎるよ。どうですか、この表情。町中で会ったら土下座するわ。とにかく西野と中田が大活躍だった。山王会会長(三浦友和)や山王会幹部(中尾彬)が話しているときに、この二人が映されることが多いけど、何も喋ってないのに顔だけで面白い。とにかくやたらにこの二人を映す。

怒鳴り合いや暴力描写が多いし過激なのだけど、不思議な爽快感がある。現実では暴力は恐怖感や不快感しか呼び起こさない。でも、この映画の暴力とか怒鳴り合いって、解放に近いものを感じさせる。人間は本当は暴力的な面を持っていると思いますが、その心に秘めた暴力性を観客に代わって解放してくれる爽快感がある。真面目に生活を送っているからこその抑圧を、モデルガンやサバイバルゲームで解放する心理に似ているかもしれない。それはヤクザ映画には共通のことなのだろうけど。

もう一つ、いいなと思わせるのは「全員悪人」と開き直っている潔さ。ヤクザというのは悪でしかないけど、ヤクザ映画というのはなぜか、いいヤクザが悪いヤクザをやっつけるという図式が多い。美化されすぎている。その部分について、変に言い訳してないのがいい。結局、クズ同士であると認めている。ただ、そのクズにもいろいろある。清々しいクズというのもある。

たけしは、今回は服役シーンから始まる。引退を考えていたけど、かつての弟分から頼まれたり、ボディガードの若い衆が殺されたことにより、山王会への復讐を決意する。この大友(ビートたけし)という人間が、たけしの美学に近いのかもしれない。自分ではもう身を引きたいのだけど、下から頼まれて仕方なくという。しょうがなく御輿に乗ってる感じというか。

公式サイトにはインタビューやメイキングの動画もあり楽しめました。ベネチア国際映画祭の記者会見での言葉も良かった。

Q. 震災で一年撮影が延期されましたが…
北野 武監督「震災で確かに映画の撮影は一年伸びた。震災後の一年間は、逆に自分は怒りを感じている部分があった。世の中、絆、愛、支えとか、表面的なものばっかりでイライラした。こういうときこそヤクザ映画を撮ってやろうとやる気が起きた」

たしかに「絆」とか「愛」とか簡単に口にする人間ほど信用できないものはない。こうやって面白いものを作ってくれるほうが、よっぽど支えになるし、やる気も出る。出るんだよ、コノヤロー!

ちょっと無理をしました。


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