玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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梨問題

▼最近は梨ばかり食べている。梨といえば、高校時代の友人Hの実家が梨農家だった。なんでも1個2000円もする梨を作っていると自慢していた。検索してみたところ「新高梨」という品種かもしれない。重さが1キロもある。高校の時に友人Hが「収穫したら、おまえに1個やる」と言ってから、かれこれ20年が過ぎました。あれから20年が過ぎました。人生、遅いということは何もありません。繰り返すが、人生、遅いということは何もありません。

▼お世話になっている会社に新しいアルバイトの女の子が入った。家電製品のマニュアルを読むのが趣味という。以後、マニュアルちゃんと呼びたい。

わたしは昼食後や、3時に梨を食べている。給湯室で梨を剥いていると、誰かしら近寄ってきて「美味しそうな梨ですねえ」などと言うから、一切れ上げることになる。最近は、マニュアルちゃんが寄ってくるので、仕方なく梨を上げていた。毎日上げている。餌付けをしている気分だが、影で「梨おじさん」とか呼ばれてそう。コロス。

で、いつものように梨を食べに行こうとしたところ、目ざとく見つけたマニュアルちゃんが付いてくる。「梨、剥きましょうか?」と訊くのでお願いした。給湯室の前を社員二人が通りかかった。するとマニュアルちゃんは、その二人に「梨ありますよ」などと声を掛けている。

お、おまえ、ワシの梨ちゃんに何してくれるんじゃ!と声が出かかったが、わたしも大人である。器の小さい人間と思われてしまう。じっと堪えて、にこやかに「よかったらどうぞ」と声を掛けた。

わたしが細かいのかもしれないが、他人の物を勝手に人に勧めるというのはどうなんだ。わたくし、Yahoo!知恵袋で民意を問おうと思いましたね。で、翌日は忙しくて梨を食べるどころではなかった。すると、マニュアルちゃんがわたしのところに来て「梨、剥きましたからどうぞ」と言う。え、君、わたしの梨ちゃんを勝手に?

いくら温厚なわたしでも、仕事のことではまったく怒らないわたしでも、これはちょっと厳重に注意しなければと思いました。仕事なんてどうでもいいんだよ。給湯室にマニュアルちゃんを呼んで梨問題について話し合った。だが、どうもマニュアルちゃんとわたしの話が何か噛み合わない。彼女は悪びれた様子もまったくない。よくよく話を聞いたところ、彼女は梨がわたしの私物ではなく、会社への差し入れだと思っていたそうである。

会社の物なのに、なんでこの人は「1個食べる?」などと、自分の物みたいに図々しく振る舞うのだと思っていたらしい。で、わたしが3/4食べて、マニュアルちゃんに1/4しか上げなかったから、常識のない変なやつだと思っていたという。

好意で上げていたにも関わらず、そんなことを思われていたとは。梨おじさん、悲しいわー。今度から梨にフルネームを書いておくか。恐ろしいほどの器の小ささ。
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