玉川上水日記

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映画「イースタン・プロミス」

イースタン・プロミス
Eastern Promises / 2007年 / カナダ、イギリス、アメリカ / 監督:デヴィッド・クローネンバーグ / マフィア、犯罪


【あらすじ】
ヴィゴ・モーテンセンが体中に刺青を入れて頑張ります。

【感想】
映画を借りるときは、俳優や監督、あらすじで選ぶことが多い。でも、この映画は「イースタン・プロミス」というタイトルの響きで借りました。響きで借りたっていいじゃないか。友人は、CDを買うときにクンクン匂いを嗅いで「いい匂いがする‥‥」などと言って買っている。匂い買いである。なんですか、匂い買いって。ちなみに匂い買いを行うとハズレが多いらしい。当たり前。

さて「イースタン・プロミス」というので、東のほうで何か約束があるんじゃないかと思ったが、そんな暢気な意味ではなかった。公式サイトによると、バルト海沿岸のリトアニア、エストニア、ラトビアなどで暮らす生活の苦しい女性が、東欧の暴力組織から英国の暴力組織へ商品のように売られる人身売買契約をイースタン・プロミスというとある。

イースタン・プロミスにより売られてきた少女が遺した日記から映画は始まる。古今東西を問わず、悪い人たちは体に刺青を入れたがりますね。マフィアの運転手を務めるニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)も体中に入れている。刺青にも、ファッションで入れる軽めのものがありますが、この人のは違う。

胸や背中はもちろん、手の甲や指の関節にも入れている。「ア、アカン‥‥」てなる。怖すぎる。目、合わさないでおこう‥‥。

左、マフィアの御曹司キリル(ヴァンサン・カッセル)。ヴァンサン・カッセルは主演を務めることが多い俳優ですが、この映画では見事なまでに頼りない二代目役を演じている。これがもう、ただごとならぬチンピラ小物臭を漂わせている。自分より強い人間には弱く、弱い人間には強い。チンピラの鏡やで!

右は、そんなキリルに顎で使われる子分ニコライ。子分のはずが迫力がありすぎる。こりゃどう見ても幹部の顔なのだった。実は、ヴィゴ・モーテンセンであることに映画を観終わるまで気づかなかった。「ロード・オブ・ザ・リング」でアラゴルンを演じたヴィゴが!あのヒーローっぽさ全快のヴィゴが全身刺青マンに変身してしまうなんて。

こうして見比べても、全然違う人である。役者のすごさですね。

こちらは看護師のナオミ・ワッツ。患者の遺品を勝手に持ってきちゃう人。しかも、それを「役得」と居直る。ロンドンの病院じゃ、わりと常識なんでしょうかね。うーん、ちょっとどうなんだ。その遺品を巡って、あれやこれや起こります。

マフィア物としてはとても良く出来ている。ゴッド・ファーザーが好きな人はいいかも。ただ一つ難点だったのは、これはわたしのほうに問題があるのだけど、マフィアであるはずのヴィゴ・モーテンセンがいい人に見えて仕方なかったこと。トム・クルーズとかジャッキー・チェンが何をやってもいい人に見えるのと同じというか。

全身刺青マンなんですけどね、雰囲気に本物の悪さや危なさがないように見える。ただ、この人は本当の悪人ではないから、それで正解なのかもしれないけど。
ちょっと前に「狼たちの処刑台」というイギリス映画を観た。この映画には全身刺青で、麻薬と銃の売人が出てくる。チョイ役なんだけど、本当に危ない人に見えるんですよ。テレビに出ちゃいけない感じというんでしょうか。役者に見えなくて「あれ、本物?」と思わせてくれる危なさなのだ。

どうもヴィゴ・モーテンセンが持っている善性を感じてしまった。「結局、いい人なんでしょ?」という。人を脅しても、人の指を切断しても、死体を運河に沈めても、やっぱりいい人に見えてしまう。このいい人問題というのはどう克服すればいいのか。などと思いながら観ました。映画はとてもいい雰囲気でした。哲学的で面白いセリフも多かったです。


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