玉川上水日記

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映画「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~
The Ides of March / 2011年 / アメリカ / 監督:ジョージ・クルーニー / 政治、サスペンス


自分以外はすべて敵。この戦いは誰のためか。
【あらすじ】
アメリカ大統領選挙の裏で繰り広げられる参謀たちの攻防。おっとりして性格が良い人は即死します。魑魅魍魎の舞台裏。

【感想】
原題「アイズ・オブ・マーチ」とは「三月の半ば」というラテン語を交えた文学的表現で、更に深いニュアンスとしては「シーザー暗殺の運命の日」という意味もある。つまり「決戦」すなわち「スーパーチューズデー(大統領選挙がある火曜日)」を指す。(公式サイトから)

この映画は大統領選挙候補者の参謀となったスティーヴン・マイヤーズ(ライアン・ゴズリング)が、他の参謀や自分が支える候補者と対決していく話。自陣営だからといって味方ということもないんですよねえ。もう、360度敵といってもよい。

とても高度な心理戦が展開される。実にいやらしい計略を仕掛ける敵陣営の参謀トム・ダフィー(ポール・ジアマッティ 写真右)。相手陣営の弱体化をはかる計略をしかけ、その結果がどう転んでも自陣営にプラスになるよう計算する。映画を観ながら、三国志を思い出しました。も、もう、アタイ、誰も信用できません‥‥。

上司であり、優れた参謀であるポール・ザラ(フィリップ・シーモア・ホフマン 写真左)。自身の経験から、なによりも忠誠心を重んじる。この映画は、出てくる脇役たちとライアン・ゴズリングの駆け引きが本当に面白いですね。食わせ者ばかりですけど。性格の良い人は一人も出てきません。

原作者ボー・ウィリモンは、実際に2004年民主党大統領予備選挙に立候補したハワード・ディーンの選挙スタッフ。相手への誹謗中傷合戦、だまし合い、当選後にどの役職に付けるかという取引、選挙の裏側のドロドロした部分がよく描かれている。きれいな虫を引っくり返したら、足がワシャワシャしていたよ!という感じです。おー、こわ!

選挙運動開始直後は、ライアン・ゴズリングは候補者であるモリス知事(ジョージ・クルーニー)に心酔している。他の汚い政治家たちとは違い、公約を実現できると信じている。やがて、その信頼が徐々に崩れていく。

参謀というのは、トップを信頼していなければできない。突き詰めていくと、仕える相手が好きだからこそ自分が汚れ役になれるというのが参謀だと思う。だが、トップが信頼に値しない人間だったとき、はたしてトップのために汚れ役ができるのか。主人公がすべてに失望したあと、憎しみを抱くことになったモリス知事のためになぜ勝利を求めたのか。名誉なのか、能力の証明か、それとも公約を実現させるという大義のためなのか。彼を突き動かしたものはなんなのだろう。

 
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