玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

メロンをもらう

▼友人Nからメロンを頂いた。長いこと人間をやっているとメロンをもらうこともあるのだなと感心した。果物の王様はドリアンというが、ドリアンは何か遠い。日本人にとっての王様はメロンだ。ニューヨークヤンキースのリベラ投手がすごいのは記録の上ではわかっているが、わたしにとって最高のリリーフはドラゴンズの岩瀬投手なのである。出ました、野球たとえ。今一つわかりにくいやつ出ました。

ようするにドリアンは遠く、メロンは近い。原田宗典の小説を読んだとき「ファミレスのメロン」という言葉が出てきた。店の格を上げるため、メニューにメロンを記載しておくという。ごくたまに頼む客がいると「本日はあいにく切らしておりまして」と答える。

そのくらいメロンは特別だった。なにせ、高級店のメロンには作者名が入る。鎮座したメロンの横、木の札に墨痕鮮やかに「岩清水 大二郎 作」などと書かれている。これはもう岩清水大二郎でなくてはならない。この仰々しさが良い。

当世風の名前は駄目だ。名前ランキングの上位に載るような名前は論外である。明治安田生命調べ「2012年 名前ランキングベスト100」によると、男児の1位~3位は「蓮」「颯太」「大翔」である。

メロンの横に「佐藤 蓮 作」とあるとどうだろう。「佐藤 颯太 作」「佐藤 大翔 作」ならどうだろう。間違いなくまずい。あっさりしすぎている。

「岩清水 大二郎 作」

どうだと言いたいね、この風格。ただいまご紹介に預かりました岩清水 大二郎です。どうだ?

何が?というしかないけど。とにかくメロンは、バカみたいに頑固な名前の人が作っていてほしい。そして、メロンをもらう側も特別な事情がなくてはいけない。重病とか。どうも病気でもないのにメロンをもらってしまうとまずい気がする。メロンてのは、そんなお手軽にもらってしまってはいけない。

「なんだか悪いなあ、病気でもないのに」思わず、友人Nにそう言ってしまった。友人Nは重々しくうなづいた。我々にはたしかにメロンに対する共通認識が存在した。メロンとはそういったものである。

・はて、いろいろ書きたいことがあったが前書きで終わってしまった。
JUGEMテーマ:日記・一般