玉川上水日記

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映画「おとなのけんか」

おとなのけんか
Carnage / 2011年 / フランス・ドイツ・ポーランド・スペイン / 監督:ロマン・ポランスキー / コメディ


わかり合うなんてできない!
【あらすじ】
子供同士がけんかをして、片方の子供がケガをした。加害者側の両親が、被害者側の両親に謝罪に行きます。最初はお菓子なんか食べながら和やかな雰囲気でしたが、やがて「もう戦争しかないな!」という展開に。わかりあえーん。

【感想】
原題の「Carnage」の意味は「虐殺、修羅場」など。この場合「修羅場」が近いのかな。「おとなのけんか」というのは柔らかくて、いい邦題だと思います。特に平仮名で記述しているあたり、この「おとなのけんか」がいかに子供っぽいかを皮肉っているようで面白い。

被害者側のアパートのみで話が展開するという舞台にありそうな作品だと思ったら、それもそのはず、舞台劇が原作なんですね。ロマン・ポランスキー監督って「ゴースト・ライター」のときにも感じたのですが、暗い笑いが好きなんですよね。性格悪そうな人だよ、ふふふ。

こちらは被害者側のロングストリート夫妻(妻 ジョディ・フォスター、夫 ジョン・C・ライリー)。妻はアフリカ問題に関心のある小説家、夫は鍋や水道の蛇口を売っている雑貨屋。もう、ジョディ・フォスターの顔がね、怖すぎるんです。こ、これはあれや、モンスタークレーマーの顔や!

そして下は加害者側チーム。カウアン夫妻(妻 ケイト・ウィンスレット、夫 クリストフ・ヴァルツ)。

話し合いの途中で携帯に出まくる弁護士クリストフ・ヴァルツ。うーん、人をいらだたせる天才!この人「イングロリアス・バスターズ」のランダ大佐役で強烈な悪役を演じましたが、今回もよかったですねえ。妻のケイト・ウィンスレットは投資ブローカー。化粧ばっかり気にしている。それぞれの個性が滲み出て本当によい配役でしたね。

たとえ親しい間柄でも価値観の違いは大きい。最初は夫婦対夫婦という図式ですが、話題が変わると夫婦間でも対立するし、相手方とも共闘する。敵味方が目まぐるしく変わる様子も面白い。

被害者側の夫ジョン・C・ライリーが、大嫌いなハムスターを道路に捨ててきたことを笑い話にしたとき、女性同士は結託してライリーを批難する。加害者側の夫クリストフ・ヴァルツは、その問題に関してはどうでもいいんですね。「それは、お宅の問題ですから」と冷静。どちらかというと、ライリー側についているようにも見える。こういう温度差って面白い。

誰かと一緒にいるとき、その人が何かにものすごく怒っているとする。相手に共感しているのを示すために、自分もその問題に怒っているフリをすることってないでしょうか。本当は自分はどうでもいいんだけど。ない?あ、そう?じゃあ、この話はなしだな!わたしはそういうことはしないけどさあ!

いやね、そういう微妙な心の動きがよく描かれていました。本当に「わかり合う」というのは幻想でしかなくて「干渉しない」というのが、お互いにできるギリギリの譲歩かもしれません。で、当事者である子供同士はとっくに仲直りして、エンディングで一緒に遊んでいるんだよねー。ちょっと変わった珍しい映画でした。80分もないので気軽に観られる一本です。

しかし、ジョディ・フォスターのイライラする演技は良かった。「あなたが今おっしゃったひと言なんですけど」って、つっかかってくる感じはすごい。怖い!


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