玉川上水日記

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映画「バッド・ルーテナント」

バッド・ルーテナント
The Bad Lieutenant: Port of call - New Orleans / 2009年 / アメリカ / 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク / 犯罪、コメディ


善悪が混ざり合う面白さ。
【あらすじ】
モラルはないが腕はある、ちょっと問題のあるニコラス刑事。麻薬で頭をスッキリさせて犯罪捜査に突撃だー!
麻薬も犯罪ですけども‥‥。

【感想】
ニコラス・ケイジが刑事役をやるとき、つい、ニコラス刑事とダジャレてしまう。そんな誘惑に勝てませんよね!どうでもいい。

さて、ニコラス刑事は基本的に麻薬をやりながら行動します。ラリッているときのハイテンションな演技がものすごい。はしゃぎっぷりが、相当ヤバイ感じである。ワニやイグアナなどの幻覚が見えます。なんで爬虫類なんだろう。メイキングで監督がイグアナに噛まれるんですよね。そこもちょっと笑ってしまった。変な映画だよ。

そして、ニコラス刑事は悪行三昧。麻薬をやるのはもちろん、一般人を恐喝して麻薬を奪う、警察の証拠品置き場からも盗む、スポーツ選手を脅して違法賭博、借りた金は返さない、老人ホームのおばあちゃんを窒息寸前にして情報を聞き出す、知り合いの交通違反を揉み消させようとする、殺人犯に捜査情報を漏らしてお友達に、などなど思いついただけでも犯罪てんこ盛り。刑事ってなに?

ただ、ニコラス刑事にも同情する点がある。過去にハリケーンカトリーナの被害によって留置場が浸水、溺れそうな犯罪者を助けるため、飛び降りたときに腰を痛めた。そのため痛み止めの薬が手放せなくなったが、薬はあまり効かず、つい麻薬に手を出したら「こりゃたまらん!」ってんで、どっぷりはまられたご様子。

とにかくニコラス・ケイジが薬をやっている映画なのですよ。このシーンもねえ、犯人の家に突入したところなんです。で、左の人が犯人なのだけど、犯人の横に座り「俺は今からマリファナをやります」って、突然吸い出すからね。犯人が「え?あんた刑事だろ?何言ってんだ!?」ってなります。そりゃそうだよ。とにかく滅茶苦茶である。

ニコラス刑事の彼女(エヴァ・メンデス、写真右)も麻薬をやっています。彼女が麻薬をやめる会に出ると言うと、ニコラスがちょっとさびしそうな顔をするんですよね。「俺を置いて、まともな方向に行っちゃうのか」という。クズですなあ。クズの哀愁が滲み出ていました。

これ、メイキングがとても面白かった。監督が言うには、この映画は麻薬が主題ではないとのこと。彼が善か悪かも重要ではない。善や悪というレッテルを笑い飛ばすようなところがありました。

常識では解決不可能と思われた難事件をバッド・ルーテナント(悪徳警部補)であるニコラス・ケイジが、その不行跡さゆえに解決してしまうという奇妙さ。奇縁、巡りあわせ、因果とか、そういった不思議さが面白い。善人が必ずしも良い結果をもたらさず、悪人が必ずしも悪い結果をもたらさない。人生にはそういうこともある。

彼が麻薬にはまるきっかけも、犯罪者を助けようと飛び降りた善行によって腰を痛めたのが原因です。いいことをした結果、悪の道にずるずる行ってしまった。

あまりお薦めはしないのですが、すごく面白かったです。普通じゃない映画ですね。あとニコラス刑事のラリッている感じが、とても演技とは思えない。実体験に基づいているんじゃないのか。さすがです。


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