玉川上水日記

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映画「SWEET SIXTEEN」

SWEET SIXTEEN
Sweet Sixteen(原題)/ 2002年 / イギリス、ドイツ、スペイン / 監督:ケン・ローチ / ドラマ


【あらすじ】
お金がないので麻薬を売って生活するよ。家も買ってサクセスしたぜ!と思ったら、すぐに燃やされました。ひどい。

【感想】
どうしても感想が書きにくい映画があって、ケン・ローチ監督のはだいたい書きにくい。銃弾が飛び交って、人がバカみたいに死んでとか、そういうのだと好き勝手にやれるのだけど。きっと感想を読んでも明るい気分にはならない。それではいけない。読後に楽しくなってほしい。

こう、みなさまの脳内にお花畑がひろがり、楽しい物質がいっぱい分泌されてウハウハになり「よぉ~し、競馬に全財産突っ込むかあ!」「仕事やめちゃうかあ!」と、なってしまう感じ。後先考えない感じ。そうなってほしい。人生を誤ってほしい!あれ、なんだかよくわからないことを書いている。まあ、とにかく明るいことが書きにくい映画だよ。

この一週間に「SWEET SIXTEEN」「海炭市叙景」「CUT」の3本を観たんですが、どれもそれぞれ重苦しいんですよ。こういった重い作品を楽しく紹介できる人がいるのだろうか。

ケン・ローチ監督の作品は貧困層を扱ったものが多いですね。この作品も例に漏れない。主人公リアム(マーティン・コムストン)は15歳。学校にも通わず、悪友のピンボール(ウィリアム・ルアン)と遊び歩いている。

母親は、麻薬密売人の恋人スタン(ゲイリー・マコーマック)の罪をかぶって刑務所におり、家にはスタンとおじがいて、二人とも暴力を振るう。だから家によりつかない。リアムは、ひょんなことから麻薬組織のボスに目をかけられて、麻薬取引に手を染めることになる。

リアムの母親は麻薬によって人生を狂わされている。親友のピンボールも売人をやっているうちに、麻薬にはまってしまった。リアムは母親に麻薬から立ち直ることを要求するが、同時にやり手の麻薬密売人として街中に麻薬をばら撒いている。自分の母親のような存在を作り出している。麻薬は、彼の周りにいる人間の人生を破壊しながら、彼と彼の家族の生活を支えるのも、また麻薬なのだ。

だが、リアムの行動は本当に悪といえるのだろうか。家には暴力を振るう人間しかおらず、生活費は自分で稼ぐしかない。姉や姉の子どもの面倒も見なければならない。周りにはまともな人間がほとんどいない。15歳の子どもが背負うにはあまりに荷が重過ぎる。

これは政治が介入すべき問題なのだろう。ケン・ローチ監督は、この物語に華々しい解決はもとより、ごくわずかな救いさえ与えなかった。ただ、こんな問題があるんだと提示してみせるだけだ。中途半端なごまかしの解決を示さないことに監督の誠意と麻薬問題の深刻さを感じた。

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