玉川上水日記

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映画「フェイク・クライム」

フェイク・クライム
Henry's Crime / 2010年 / アメリカ / 監督:マルコム・ヴェンヴィル / ドラマ


本当の変人は誰か。
【あらすじ】
お人好しの主人公が銀行強盗します。

【感想】
「信じたら、だまされる。昨日の敵と銀行強盗?!罠だらけのクライム・サスペンス!」という宣伝文句なのだけど、まったくクライム・サスペンスではないのだった。緊迫感がまるでない。老人がゲートボールをやっているような、のんびりとした映画でした。一応、銀行強盗もやります。ゲートボール感覚で。

キアヌ・リーブス演じる主人公ヘンリー・トーン。料金所で働く、ごくふつうの人に見える。キアヌ・リーブスは表情があまり変わらないし、何を考えているのかわかりにくい。それが、この役に合っている。

この主人公の不思議なところは、自分の身に何が起こってもまったく怒らないのだ。悪友に銀行強盗の罪を押し付けられ有罪になったり、服役中に妻から離婚され、妻は銀行強盗の一人とくっついてしまう。それでもうっすら微笑んでいる。なぜだ。

携帯電話で話しながら車を運転していた女優ジュリー・イワノワ(ベラ・ファーミガ)に、はねられる。明らかにジュリーが不注意なのに「なんでそんなとこに立ってんの!」と、キレられる。そこまでされてもキアヌは怒らない。さらにジュリーは「携帯で話してたのは確かだけど、べつに運転に支障ないし!全然ないし!」とまくし立てるからすごい。いや、アンタ、人ひいてるけどな‥‥。これが訴訟社会かー。

しかし、キアヌは「大丈夫。行っていいよ」と優しく言うのだった。そこは訴訟でしょうよ!このひどい加害者に賠償請求でしょうよ!と思うけど、そうはならない。彼はうっすら微笑んでいる。え、逆に怖い。それどころか、ここからラブストーリーが始まるのだ。

キアヌのフワフワして何を考えているのかわからない人格が面白かった。彼は法律や規則とはべつに、みずからが信じる規範に沿って行動している。それは現在のアメリカ社会の常識とはかけ離れている。しかし、何かあればすぐに相手を訴えるような考え方って本当に正常なのだろうか。彼は変人なのだけど、本当に彼が間違っているかというと、そうでもないように思える。

この作品は、相手を批難して自己を守るという社会の在り方に疑問を呈した社会派作品なのかと思って観ていた。しかし、キアヌが「やってもいない銀行強盗の罪で服役したので、これから実際に銀行強盗をやりたいと思います!」と宣言したのでズコーッてなった。なにその動機。わけがわからない人だよ。

ミッション:8ミニッツ」「マイレージ、マイライフ」など最近よく見かけるベラ・ファーミガ、「ゴッド・ファーザー」でキレっぱなしの長男役を演じたジェームズ・カーンなど、脇を固める役者も良かったです。ちょっと変わったラブコメ犯罪映画でした。


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