▼友人A子と食事をする。小学校の頃やった伝言ゲームの話をした。伝言ゲームとは「誰が、いつ、どこで、なにをした」という文を耳打ちして次々に伝えていき、正確さを競うゲームである。実際、正確さはどうでもよくて、文章が間違えているほうが面白い。A子の伝言ゲームについての妄想を聞いた。
A子:小学生のとき、クラスで伝言ゲームをやってるんだけど、わたしの所に来た文章をちょっと変えて流すのね。
わたし:あー。変な文章にしたほうが面白いし。いるわー、そういう迷惑な人。
A:うん。それで列の最後の人が答えを発表するんだけど、途中でわたしが文を変えたはずなのに、答えがなぜか違ってないの。
わ:元に戻ってるんだ。
A:そうなの。それで、一応正解だから列のみんなは盛り上がってるんだけど、わたしはなんだか納得がいかなくて。
わ:うん。
A:その場はそれで終わりになって、小学校を卒業してから同窓会に行くんだけど。
わ:ずいぶん飛ぶなあ。十何年後?
A:うん。再会した友だちと小学校の頃の話をしていると伝言ゲームの話になるの。でね、一人の男の子が『俺、答えを変えて流してたのになぜか正しい答えになってたんだよね』とか言ってるの。
わ:ああ。同じようなことを彼がやっていて、変えた答えが偶然正しい答えになっちゃったんだ。
A:そうなの!でね、彼にそのことを伝えたら『やっぱりおまえか』みたいなことになって。それで意気投合して、二人だけで別の場所で飲み直すことにしたんだけど、彼が急に顔を寄せてきて耳元でささやくのね。
『俺は、おまえのことが、好き‥‥、今度はちゃんと伝わった?』
『うん‥‥』て、うなづくと、おでこにキスされるの!
キャー!そんなのたまらなーい!もう気絶する!
わ:‥‥、盛り上がってるところなんですが、全部妄想ですよね?
A:悪い?
以上、A子の「こういう恋をしたい」という長い話を聞いた。小学校の頃、伝言ゲームで何かあったわけでもなく、そもそも同窓会も開かれておらず100%完全な妄想らしい。
うちの診療所では治療ができないので、大きめの病院で精密検査を受けてください。実にお気の毒な患者。