玉川上水日記

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映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
2011年 / アメリカ / 監督:スティーブン・ダルドリー / ドラマ


欠落を埋める旅。
【あらすじ】
9月11日の同時多発テロにより父親(トム・ハンクス)を亡くしたオスカー(トーマス・ホーン)は、父親の遺品から鍵を見つける。その鍵は何を開けるためのものなのか、オスカーはニューヨーク中を探し回る。

【感想】
ちょっと変わった邦題だなと思いまして、でも原題が「Extremely Loud & Incredibly Close」なので忠実に訳してるんですよね。なんでこんな題かというと、オスカーに関わりがある。オスカーはアスペルガー症候群なんだと思います。

アスペルガー症候群について、わたしのような素人が説明するのは危険ですし、できたら専門性のあるサイト(東京都自閉症協会)や文献をあたっていただければと思います。

アスペルガー症候群は個別に症状が違うので、これはあくまでこの映画のオスカーについてですが、並外れた知識量があるものの、人の気持ちを推し量れずコミュニケーションがうまくとれない。クラスメートからも浮いており友達がいない。音や光などへの過敏さがある。題名の「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、彼が世界から受ける印象を表わしているのだろう。

で、映画の中に彼がアスペルガー症候群であるという説明が一切ない。だからオスカーが一方的にまくしたてたり、テーブルに乗ったり、突然走り出したりという行動に違和感を持つ人がいると思います。アスペルガー症候群という知識を前提としてしまうのがいいのか悪いのか、よくわからないんですよね。でも、これはどこかで観客に通知しとくべきだったんじゃないかなあ。そうじゃないと「なんだ、あいつ」ってなるしなあ。

オスカーは祖母の家の間借り人(マックス・フォン・シドー 写真右)と、ひょんなことから知り合い、一緒に父親が遺した鍵の謎を探り始める。彼もまた心に欠落を抱えている。この二人の不器用なやりとりがいいんですよね。わたし、おじいちゃんが大好きだしさあ。
それとオスカーの美少年ぷりがすごい。俳優でもなく、クイズ番組に出ていたのがきっかけでスカウトされて、この映画に出ることになったという。

そんなうまい話があんのかなー。本当かー、姉が冗談で事務所に履歴書を送ったら採用されたとか、友達のオーディションに付いて行ったら、たまたま僕がうかっちゃいましたエヘヘとか、そういうパターンじゃないのか!

でも、オスカーが言うなら、オスカーが言うなら、あたい信じるわ!だってDVDの特典映像でそんなん言ってたしな!文句があるやつは弱いやつだけかかってこい!

ストーリーに関しては「そんなにうまいことあるか」というところはあるんですけど、現代のおとぎ話として、こういうのもいいんじゃないかと思いますよ。現実には、人の死は時間で薄まるかというとそうとも言えず、一生その苦しみが癒されないこともあると思う。この映画は希望を持たせる終わり方をしてるし、それはそれで一つの答えなのでしょう。お薦めです。

アスペルガー症候群については、サヴァン症候群を扱った「火星の人類学者」(オリバー・サックス)や、アスペルガー症候群の青年の成長を描いた「恋する宇宙」も参考になるかも。「恋する宇宙」は原題が「Adam」なんですよ。映画はまっとうなのに邦題をそんなのにするから、プンスカきて感想を書かなかったけど。変な邦題をつけるのと、アニメを実写化するのは法律で禁止すべきだ。

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