玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

辟邪名(へきじゃめい)

▼まだ花粉症がひどい。今年は薬を飲まずに乗り切ろうとしている。すべては実験である。

▼桜が開花した。東京の桜の開花は靖国神社染井吉野を基準として決められている。開花とは「(基準となる木の)さくらの花が5から6輪以上開いた状態」(東京管区気象台)。

先日、開花のニュースを観た。靖国神社に来た気象庁の職員が、携帯電話で「開花ということでお願いします」と言っていた。「開花しました」でいいと思うけど。その様子を大勢のマスコミが取材している。もうみんな開花だとわかっているはずだが、隣にいるもう一人の職員が「開花です。開花です」と周囲に言っていた。あの係、わたしもやりたい。是非わたくしに。全然必要とされてない感じが好き。

開花の発表など、わざわざカメラが来て撮るほどのことでもないし、「開花です」と言ってまわる必要もない。実際、二年前の震災のときはそれどころではなかった。だが、どうでもいいこと、くだらないことが溢れている日常がいいじゃないかと思う。それは余裕というものだ。

▼少し汚い言葉ですが「佐藤、斎藤、馬のクソ」という言葉がある。佐藤や斎藤という名前の多さを笑ったものですね。あの言葉は誰が考えたのだろうか。

佐藤や斎藤の「藤」の字は藤原氏を意味している。藤原氏関連ですよ、名門ですよ、ということだろう。藤原氏といえば藤原道長の和歌が有名ですね。
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
(この世は 自分(道長)のためにあるようなものだ 満月のように何も足りないものはない)
おまえ、調子に乗ってるなー。みんな、おまえのこと嫌いだってよ!という、例の歌である。知らないけど。

佐藤、斎藤、馬のクソというのは、そんな権勢をふるう藤原氏を嫌った人が言ったんじゃなかろうかと思ったわけです。でも平安貴族というのは馬ではなくて牛に乗ってるんですよね。だから、佐藤、斎藤、牛のクソが正しいのではないか。どうですか。

でも実際のところは、この言葉は明治から昭和ぐらいのものなんだと思う。明治8年の平民苗字必称義務令(平民の苗字の義務化)が関係しているかもしれない。こういうことって、どう調べればよいのだろうか。そんなことを思ったので名前関連の本を読んでいる。これがちょっと面白くて、佐藤、斎藤の話は載ってないんですけど「 辟邪名 (へきじゃめい)」について書いてある。

辟邪名とはあえて汚い名や動物の名をつけることによって、魔を遠ざけるらしい。貴族がつける「麿」というのは便器のお丸という説がある。これも辟邪名ですね。ちょっと前に悪魔くん騒動というのがありましたが、辟邪名からすればあの名付け方は正しいのかもしれない。悪魔より麿のほうがひどくないか。だって、麿は便器なんだし。

今、たとえば「山田 便器」と名付ければ虐待であるし、ツイッターは炎上するし、児童相談所がやってくる。魔よりも先に人間に怒られる。というか、便器の会社みたい。
JUGEMテーマ:日記