玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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ピノ隠し

▼午前、外で用事を済ませる。街頭テレビでWBC日本×プエルトリコ戦の結果を知る。日本1-3で敗退。午後にお世話になっている会社で打ち合わせ。「WBC、残念でしたね」とか「日本、惜しかったですね」などと声を掛けられた。打ち合わせが午後からなのは、わたしが午前にWBCの準決勝を観たかったからだと思われていた。

「いや、午前はちょっと用事で」と言っても「はいはい」とか「用事って、スポーツバーでWBC観戦ですか?」などと言われる。まったく信じてもらえない。今まで積み上げてきた信頼と実績ですなあ。「じゃ、じゃあ!先方に電話して確かめればいいじゃないか!」「はいはい」「休むんだったら半日じゃなくて、架空の親戚を殺して丸一日休むもの!」「‥‥」。

結果、軽蔑された。無罪なのに軽蔑された。世の中は理不尽に満ちている。

WBCは開催前はそんなに期待してなかったけど、始まってみれば面白い試合が多かった。出場国のレベルが近づき、接戦が多かったのも良い。そして、中日ファンのわたしには井端選手の活躍が何より嬉しかった。最後は残念な終わり方だったが、試合はいつも勝てるわけではない。

わたしなどバッティングセンターの80キロのボールですらボテボテのゴロを打つのであって、選手には感謝と尊敬しかない。

▼隣席のTさんから「何か取り組んでいることはありますか?」と訊かれた。なんだろうねえ。アイスのピノを買ってきて冷凍庫に隠すというのをやっている。ピノ隠し。それで忘れた頃に冷凍庫を開けて、ピノを再発見したときの喜び。コロンブスが新大陸を発見したときも、あんな感動を覚えたのだろう。コロンブスに謝って。

前はシュークリームでやってたけど、賞味期限が短い商品だと、忘れた頃には腐っているので、やはりアイスなどが望ましい。「ピノ隠しだな!」と自信満々に答えた。

Tさん:いや、仕事でなんですけど‥‥。査定の書類なんだけど、書くことがなくて。

わたし:し‥‥、仕事で?

T:仕事で‥‥、です。遊びじゃなくて。

わ:ピノ隠しは仕事だけどね。ピノ隠しが本業で、この仕事は副業だしね!バイト感覚だしね!だって、リスは木の実を埋めた場所を忘れて、それが芽吹いて森の繁栄に役立っているわけだから、これは立派な仕事なんです。

T:木の実は森の繁栄に役立ってますけど、ピノ隠しは何か役に立ってるんですか?


わ:‥‥。

T:しゅんさん(わたしのこと)は、何か役に立ってるんですか?


わ:‥‥。

キライ。
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