玉川上水日記

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映画「ゴーストライター」

ゴーストライター
2010年 / フランス、ドイツ、イギリス / 監督:ロマン・ポランスキー / サスペンス


疑惑の真相はグーグルに書いてありました
【あらすじ】
元英国首相が手記を出版することになった。手記のゴーストライターとして雇われた主人公(ユアン・マクレガー)。ただのゴーストライターのはずが、資料に秘められた疑惑に気づいたことから陰謀に巻き込まれます。

【感想】ネタバレしてません。
沈鬱で重苦しい曇り空、荒涼たる風景が多く映し出される。その光景はこの映画を端的に表わしている。ヨーロッパ映画らしく、ずーっと陰気な感じでね、出てくる人もみんな怪しいし一癖ありそう。怪しくない人がいないよ。この雰囲気は好き嫌いがかなり分かれるかもしれません。わたしは好きなほうでした。

ユアン・マクレガーが仕事をする元首相の隠れ家。窓が大きくて、木製家具に囲まれた静かな環境。こういうところで仕事したいなあとか思いながら観てました。

左は元首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)。運動好きで快活、気性は激しいが奥さんに頭が上がらない感じ。ピアース・ブロスナンは本当に良かったですね。何を考えているか、わかりそうでわからない感じが。

右は秘書兼愛人のアメリア(キム・キャトラル)。この人、すごくセクシーなんですが当時53歳なんですね。恐るべし。映画の中では三十代半ばに見えました。

主人公との会話では彼女のピリッとしたところがうまく出ている。
「ラング(元首相)とはうまくいってる?」と主人公に訊ね、「うまくいってる。相棒って呼ばれたよ」と主人公が喜んでいると「それは名前をおぼえていないだけよ」と切り返す。こわいわー、この人。静かなサスペンスながら、ニヤッとさせる場面もけっこうあります。

元首相の奥さんルース・ラング(オリヴィア・ウィリアムズ)。ファーストレディらしく、頭の回転が速く、ダンナより肝っ玉が座っている。観終わったあとに思い返せば、どこまでが本心かわからない人です。

主人公(ユアン・マクレガー)は、名前もないゴーストライター。小説家になれるだけの才能はなくて仕事が速いことだけが取り柄。どこにでもいて代わりのきく存在。だからか感情移入がしやすいんですよね。

持ち合わせている正義感もごくごく人並み。元首相の手記を書いていくうちにある疑惑にたどりつくが、それを命をかけて究明するという感じではない。「俺は仕事でやってるだけだし、社会正義とかどうでもいいからほっといてくれ」みたいなの。でもモラルがないとか、そういうことじゃないんですよね。ふつうの人が大きな権力に命を狙われたときって、こんな反応なんじゃないかなと思いました。

で、元首相夫人に誘われると、かなり簡単にヨロヨロっと行ってしまう。「面倒なことになるから絶対に駄目だぞ!」と自分に言い聞かせておきながら、呼ばれた三秒後には「夫人~!」ってなってるからアホです。共感できるアホです。

謎には大小ありますが、この映画に出てくる謎はわりと大きなものです。それも最初は小さく見せといて、だんだんと大きく、やがて個人では対処のしようがない大きなものへと変貌していくのが怖い。大胆に広げた大風呂敷を最後にはきちんと畳んでいるのが見事でした。

このジワジワ怖くなる感じがいいんですね。前任者の不審な死を追っていくうちに、「なんか僕って前任者と同じ行動してるよね?あれ~?この展開は‥‥、ひょっとしてアカンやつや!」って、なるのが怖い。派手さはないサスペンスですが面白かったです。


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