玉川上水日記

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映画「ロード・オブ・ウォー」

ロード・オブ・ウォー
2005年 / アメリカ / 監督:アンドリュー・ニコル / 犯罪、戦争映画


世界中には5億5千万丁の銃が出回っている。12人につき1丁の計算になる。ワシが目指すのは1人1丁の世界や~!
【あらすじ】
武器商人が武器を売って売って売りまくります。戦争やっている両方に売っちゃうね。

【感想】ネタバレしてません。
武器商人を映画にした作品は珍しいですね。実在の武器商人をモデルにしたというノンフィクションのようなフィクション。戦争映画の棚にある作品なのだけど戦闘シーンはほとんどありません。異色の映画である。

オープニングからすばらしくて、弾丸が製造されてから使われるまでを弾の視点から撮影している。「弾の一生」という作品のようだ。そこから武器商人ユーリ・オルロフ(ニコラス・ケイジ)のアップに繋がり「ワシは1人1丁売りたいんやー!」と強烈なメッセージを発する。こちらの期待も俄然高まるのだった。

この武器商人がいかにも悪者なのかというと、そんなことはない。そこらにいそうなヤリ手の営業マンという雰囲気。「僕が売らなくても他の誰かが売る」というセリフには説得力がある。だから売っていいんかい、という話ですけども。それに自分の子どもが銃で遊ぶのには嫌悪感を示したり。この人ってわりとふつうの人なのだろうなあ。ニコラス・ケイジは役の当たりはずれが激しい印象ですが、この役はピッタリですねえ。

白い服を着た人はリベリアの大統領。いかにも悪そう。銃を買うときに試し打ちで部下を殺します。それを見たユーリさんは激怒。「ちょっと、あんたー!なんてことを!銃が中古になったやないかー!」さすが武器商人、怒るポイントがすごい。そんな二人は意気投合。

右側はユーリの弟ヴィタリー(ジャレッド・レト)。兄に頼まれて仕事の相棒になる。取引で、代金の代わりに受け取った麻薬に手を出して薬物依存になってしまう。いろいろと問題がある人ですが、この映画に出てくるもっともまともな人かもしれない。

売春婦のセリフにもうならされた。「エイズで死ぬのは10年後なのに、なにを心配してるの?明日、死ぬかもしれないのに」腰が引けたユーリは売春婦を部屋から追い出してしまう。武器商人がもっとも恐れたのがエイズというのは皮肉なのかな。

戦争などを扱った映画というのは難しい。問題に正面から挑んでシリアスなものにするか、銃やミサイルを撃ちまくって勧善懲悪ものにしてしまうか、あまり選択肢はないように思う。この作品は、ちょっとコメディっぽく作られているから気楽に入り込めました。

ただ、中盤までは武器商人ユーリさんのサクセスストーリーかと思ってたのですが、終盤はえらく苦い話になってるんですよねえ。少年兵、エイズ、虐殺、内戦、五大常任理事国(米・英・仏・露・中)の武器輸出など、どうしたって重い内容になってしまう。真面目か娯楽か、いっそどちらかに拠ったほうが良かったのだろうか。ふら~っと中間を漂う感じでね。バランスが難しいですね。

監督、脚本はSF映画ガタカ」のアンドリュー・ニコルガタカで主演したイーサン・ホークも国際警察の刑事役で出演。今回は、ニコラス・ケイジにからかわれるためにいるキャラみたい。切れ者という設定のわりに、おちょくられててかわいい。

映画で使われた武器は実際に武器商人が扱っているもので、撮影後はリベリアに売却されたそうです。いい映画だと思います。


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