玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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八重の桜 本「アンダーグラウンド」(村上春樹)

NHK大河ドラマ「八重の桜」を観ている。新島八重という、今までドラマになっていない人をとりあげているのがいい。で、八重のお兄さんの山本覚馬役で西島秀俊さんが出ている。昨日は覚馬が槍の試合をするシーンがあったのだけど、脱いだら西島さんの体がものすごいんである。

ボクサーのようなムキムキの体。完全にスポーツ選手の体なのだ。あれはどうなんですかね。「ほおおおおお!」となってしまい、ドラマに集中できない。「これはすごいねえ。この役の人って41歳なのに。41でこれかあ。むむむ‥‥」など。その場にいたおっさん四人がそろって感心。

プロテイン飲んでるな!あれは!」「いや、プロテインにしてもすごい」「あれは格闘技やってる体だな!」「あんな体になりたーい!」などなど。ドラマを観ない。ポヨンポヨンの体のやつらがうるさい。

ちなみに「西島秀俊 き」で検索すると「筋肉」が一番上にくる。


地下鉄サリン事件について、被害者の証言を集めたインタビュー集「アンダーグラウンド」(村上春樹)を読む。もうあの事件から18年が経つのかと思う。同じ年に阪神大震災が起きている。日本史に残る事件が短期間に二つも起きるという大変な年だった。

本を読むと、被害者全員がオウム真理教や麻原を恨んでいるわけでもないことがわかる。後遺症が軽い人は、オウムとサリン被害が明確に結びつかないのか、それほど怒っていない人も多数いたのが印象的だった。もちろん「死刑にしろ」と言う人も大勢いる。

被害者というとひとくくりにされてしまうけど、みなそれぞれ違う考えを持っている。インタビューを読んでいると被害者がきちんと名のある個人として浮かび上がってくる。どこに生まれて、どんな教育を受けて、仕事に就いて、当たり前だけどみんなどうにかこうにか人生を送ってきたふつうの人たちなのだ。

そんなごく当たり前ともいえた人生が、あの事件によって狂っていく。その日たまたま仕事の都合で電車を変えたとか、家を出るのが遅くなって一本後の電車になったとか、ほんのささいな偶然で以後の人生がまったく変わってしまうという恐ろしさ。以後の人生がなくなってしまった人たちもいる。

オウムの人々は、被害者をごくふつうの生活を営んでいる個人として認識できたのだろうか。自分たちとは違う愚かな人間たちとしか見ていなかったのではないか。インタビューを読めば、それぞれが結婚したり、離婚したり、子どもが生まれたり、転職したり、家を買ったり、困難はありつつもごくふつうに暮らしてきたことがわかる。当たり前の積み重ねである。しかし平凡だがけっして馬鹿にすべきではない生活を送っていたことがわかる。

職務をまっとうしようとし命を落とされた営団職員の方や、あの日たまたま居合わせて重大な障害が残ってしまった方など、読んでいて苦しくなる。忘れないようにしなければならないと思う。もう事件から18年が経とうとしていますが、縮瞳や目の痛み、記憶力の減退、頭痛、悪夢など後遺症は改善したのだろうか。とにかく悪夢を見るという記述が多いのが印象的だった。追跡調査をしてもらいたいものの、そっとしておいてほしいと思われる方もたくさんいるのでしょう。

あの犯人たちを理解のできない悪魔と決めつけて安心するのはたやすい。でもそれだけでいいのかと思う。彼らとわたしたちの側に明瞭な線が引かれているかというと、そうは思わない。その境は曖昧で見えにくく、ちょっとしたことであちら側に渡ってしまうのではないか。万が一にもそうならないよう、こういった本を読み継いでいかなければならないのだろう。ごくごく平凡な人間が社会を構成している、ただ生活を送っている、それが大事なことなのだという、あまりにシンプルな事実を確認するためにも。

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