玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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草履取り

▼いろんなことに興奮をおぼえる人はいるもので、女の人が車のエンジンをかける音に興奮する人がいる。その人は、車のケーブルだかバッテリーに細工をしてエンジンがかからなくしてしまう。女の人はエンジンをかけようと何度もやってみるがかからず、その音を物陰でこっそり聴いて興奮するという話を読んだ。変態と軽蔑するのは簡単だが、ここまで屈折してしまうと「なんだか大変だな」と思います。

その話を会社で隣席のTさんにしたものの信じてもらえなかった。嘘だと思われている。変な内容の本ではなくてマーケティングの本に書いてあったんだけど。だが、いくら説明しても信じてもらえないのだ。恐るべき信用のなさ。

ネットで調べても載ってなかった。検索して見つからないと「ほら、そんな話どこにもないじゃないですか」と言われる。ネットで見つからなければ嘘と断定されるのは困る。さりとて「女の人がエンジンをかけようとする音に興奮する人がいるんだよお!」と主張し続けるのも変なのでやめといた。

これはわたしも、人に信じてもらえないことに興奮をおぼえるようにならなければ駄目である。そうでなければ割に合わない。「またしても信用されなかった!気持ちいいっ!」とならなければ。ド変態である。

▼打ち合わせに行きましたら、取引先の女性社員が膝をついてお茶を出してくれる。居酒屋でもそういう姿勢で注文をとるところはありますけど。

膝をついてお茶を出されたりすると、いたたまれない気分になるというか。なんだか居心地が悪くなってしまうのだ。逆にその姿勢を見て、丁寧でいいと思う人もいるだろうし、その接客法を決めた人はそれがいいと思っているのだろう。サービスは受け手が満足すれば正解なのだろうなあ。

秀吉の草履取りの話がある。信長に仕え始めた頃の秀吉(この頃は木下藤吉郎)は草履取り(履物係)をしていた。信長が外出しようとすると草履が温かい。「わしの草履を尻の下に敷いておったな!」と信長が怒ると「懐で温めておりました」と秀吉が答えるやつである。

秀吉の気働きのすごさを伝える逸話だが、これは信長が喜んだから一種の美談として伝わっているわけである。もしわたしが信長の立場だったら「引くわー。懐で温めるとか、そこまでしなくても。秀吉とかほんと引くわー」とか言う。仕える側がかわいそう。

もっとも秀吉ならば、仕える人間を見て提供するサービスの度合いを見極める観察力を持っているだろうけど。戦国時代の逸話などを挟んでいくとビジネスパーソンのブログって感じがするねえ。しませんか。してくださいったら。週刊ダイヤモンドあたりに載せませんか。

なんだかビジネスパーソンとか聞くと具合が悪くなるんだよなあ。不思議。ただの会社員だからかね。横文字のしゃらくささというか。ノマドワーカーって言葉も‥‥、などと何も考えずに勢いだけで書いていくと世界中の悪口を言い出すのでやめとこ。憧れるわー、ノマドワーカーって響き!
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