玉川上水日記

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映画「金環蝕」

金環蝕
1975年 / 日本 / 監督:山本薩夫 / 政治、社会


全員悪人、肉食のおじさまたちが大活躍。
【あらすじ】
1965年の九頭竜ダム汚職事件をモデルに作られた作品。「全員悪人」はアウトレイジのキャッチコピーですが、この映画、まさに全員悪人。政治版アウトレイジ

【感想】ネタばれしてません。
巨額公共工事の入札をめぐって、政治家、ゼネコン、金貸したちのだましあい合戦。汚職、談合当たり前、弱みになりそうな奴は殺します。「金、女、権力」以外の話は出てこないよ。ほんとだよ。愛人がいるのは当然で、何人いるかが問題である。神谷直吉(三国連太郎)の愛人は24人て。一クラスできる。愛人学級ができる。

ポスターもどぎついよ。小さい子が泣き出す。

この時代は、前売券700円なんだなあ。それはどうでもいいか。

海千山千ともいえる登場人物たちの駆け引きは見応えがある。悪い奴しか出てこないんだけどそれぞれ魅力的。しかし、昔の政治家ってのはこんなに悪かったのかしらとある意味感心してしまう。でも悪い人って仕事できそうなんだよねえ。今の政治家は総じて淡白に見える。角を矯めて牛を殺すという言葉があるが、どうもそんな印象を受ける。清廉ではあるが能力もあまりないという。そんなことをいうと汚職を奨励しているようですが、そういうことではないです。

この映画に出てくる人々は本当に欲望一直線なので、今の政治家とは違う人種を見ているような気分になるんですよね。それは彼らが戦中を生き抜いてきたことが大きく影響しているのだろう。貧しかった戦後を乗り越えたその反動からの金、女、権力への執着というか。

とにかくみんながみんな、金、女、権力大好きっ子なんだよねえ。そんなに欲しいのかなあと観ながらずっと思っていた。もう共感できるレベルをはるかに超えてしまっているのだ。これはわたしが清廉ということはまったくなくて、むしろその魅力をきちんと味わったことがないからかもしれない。それと満たされた時代にいることからの欲の少なさだろうか。物欲が乏しいといわれる若い世代などはこの作品をどう観るのだろう。

宇野重吉西村晃仲代達矢三国連太郎が特に良かったですね。
原作の石川達三がつけた「金環蝕」というタイトルもすばらしい。「周りは光り輝いているが中身は真っ黒」という皮肉ほど、この作品をうまく表わしている言葉はない。



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