玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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アニメ「ちはやふる」

ちはやふる
2011年 / 日本 / 原作:末次由紀、監督:浅香守生 / スポーツ

【あらすじ】
福井から転校してきてクラス内で浮いていた綿谷新(わたや あらた)。ふとしたきっかけで新とかるたをした綾瀬千早(あやせ ちはや)は、競技かるたの世界にのめり込んでいく。

【感想】ネタばれしてません。
かるたというと多くの人は、風流でのんびりしたお正月の遊びと考えているのではないでしょうか。ちがーう!君らはかるたを舐めとるよ!百人一首というと坊主めくりぐらいしかご存知ないでしょう。「蝉丸って坊主なの?」とか言ってるんでしょう?いいんだよ、蝉丸の話とか。

かるたとは生き馬の目を抜くような、上の句の最初の文字を聞いた瞬間、取り札が宙に舞うような、0.1秒を争うカードバトルなのです。カードバトルて。なんか違うような。

しかし、競技かるたを一度もやったことのないわたしが偉そうに。よく言うわ。アニメでは、競技かるたについて何も知らなくても自然にルールが理解できるようになっています。ゲームの緊張感、スピード、試合中の心の揺れなどが丁寧に描かれていて楽しめます。わたしが知っている百人一首とまったく違うんで驚いた。

かるた部の仲間、ライバルたちもそれぞれ持ち味があっていいですね。太一とニクマンくん、机くんとかなちゃんの戦いは熱かった。オープニングの近江神宮(かるたの日本一を決める大会がある)やエンディングの紅葉も音楽と調和していていい。風景の描写は本当にきれい。

とここまで褒めちぎってきましたが、競技かるたについてちょっと引っかかる部分がある。アニメの中でもかるた部随一の古典好きのかなちゃんが疑問を呈していますが、競技かるたは和歌を楽しむ姿勢とかけ離れているんじゃないかと思う。

決まり字というのがいくつかあります。たとえば「すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ」という句。百人一首で「す」で始まるのはこの句しかないため「す」が読まれた瞬間、下の句「ゆめのかよひぢ~」がものすごい勢いで取られる。誰ものんびりと二文字目以降を聞いていない。これが和歌を楽しむということだろうか、という問題である。

作品内でいろいろ理由付けをしているものの、やはりこの問題は解決していない。ただどんなスポーツもたいして理由ってのがないしなあ。札を早くとるゲームと割り切って考えてしまえば、それはそれでいいような気もする。そう考えても、この作品の価値が否定されるわけでも、面白さが減るわけでもない。

少しでも早く札をとるために情熱を傾けるひたむきさは観ていて気持ちがいい。壁に突き当たって、その壁を乗り越えていく様子、特別な才能があるわけではない部員たちの努力がすばらしい。努力、友情、情熱、ちょっと気恥ずかしくなるような熱いものを前面に押し出した作品です。

本当にひたむきな努力しかないんですよね。勝ち負けは人を成長させますが、負けたときにこそ大きく成長するのだと思いました。実にスポコンな作品。今後、かるたは文化系ではなく体育会系とみなします。お薦めです。

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