玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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風呂

▼この前、座椅子を買いまして、まあそれがね気に入ったのですよ。あまりの快適さに、もう他には何もいらない!と喜んでおりました。コタツ、みかん、座椅子、テレビ、パソコン、とりあえずこれだけあれば王国の誕生ですよ。余は愉快じゃ!などと浮かれておった。風呂が壊れました。

うーん、風呂を攻めてきたかー。王国滅亡の危機。そりゃ、何もいらないとは言ったけど風呂を攻めるとはねえ。まいった。一応修理の手配をし明日来てもらうことにした。

とりあえず今日、風呂に入りたいがどうすればよいのだろう。ガスは生きているのだからMA方式は使える。マリー・アントワネット方式は使える。鍋ややかんでお湯を沸かしてそれを浴槽にためて下女に体を洗ってもらうというやつである。わたしの場合、お湯を沸かすのも体を洗うのも自分だけど。そこがマリーと違う。

でもお湯を沸かすのは面倒だ。とりあえず水は出るので冷水シャワーを浴びることはできる。ふんだんにお湯が使える贅沢に慣れているが、たまにこういう不自由もいい。寒中水泳だと思えば平気だろうし、ささっと済ませることにした。

「いやあ、冬場に真水のシャワーというのもなかなかオツなものですね。ワッハッハ!思ったよりも冷たくないんで逆に驚くぐらいだなあ。ひょっとして、これはお湯が出てるんじゃないか!だってものすごくあったかいもの。あったかーい!たのしーい!」と、一人茶番を演じてみたものの久しぶりに本気で「死んでしまう」と思ったのでやめといた。唇が紫になってガタガタ震えてた。

▼一緒に仕事を請けているN氏と打ち合わせへ。電車の中でN氏が「生まれ変わったら女子高生になりたい」などと言うので、わたしはすぐに寝たフリをして相手をするのをやめた。その場はそれで済んだが、それからことあるごとに女子高生っぽいメールを送ってくる。あの人は、気持ち悪い遊びを考えさせたらなかなかのものである。

女子高生っぽいというか、おっさんが考える女子高生のメールである。特に意味がなくひらがなの小文字を使う「ゎたし」や、二文字で一文字を構成する「木主」などを使う。N氏から来る仕事のメールの最後がそういった形になっていることが多い。

「報告書確認しました。他のメンバーにはCCつけて送っておいてください。
木主にのぼりたぃ」

唐突に女子高生っぽさをアピールしてくる。これが女子高生らしさとして正解なのか不明だ。柱に登りたいって何がなんだかわからない。妖怪ではないか。わたしも負けじと似たような文を送っている。

「了解しました。
けふ、渋谷 DE たぬき WO 見たニョロ!」

ちょっとした暗号みたいになっている。もうお互いやめたいと思っているはずだが意地の張り合いから、送るのをやめられない。やめられないニョロ。まっとうな人間になりたい。