玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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呼び方

▼携帯が壊れたので自宅に連絡が欲しいという人に電話した。その人の奥さんが出た。いつもお世話になっておりますという型どおりの挨拶を交わした後、なんと言うべきか迷ってしまった。普通ならば「ご主人はいらっしゃいますか」でいいのだろう。

しかし、ふと「主人」というのもなんだなと思った。主人という言葉は仕える人があってはじめて成立するものだから、暗に奥さんを使用人呼ばわりしている気もする。じゃあ「ダンナさん」と呼べばかなり慣れ慣れしい。「明彦はいるか?父さんだ」と名前で呼べば、実家の父親みたいで偉そうである。そもそも向こうが年上であるし、わたしは父さんではない。

では苗字ならいいのか。だが奥さんも同じ苗字であるよ。役職で呼ぶのも、その役職はあくまで社内のことだからそれを外に持ち出すのも妙な話だ。こうなるともう呼びようがない。

「午後すぐに『今日は取引先寄った後、直帰するから』と外出してしまい帰ってこないという、世間で言うとそれはサボりではないかと思うんですが、そういったことを堂々となさる肝っ玉の据わっているというか、図々しいというか、あきれるというか、どうしようもないロクデナシというか、いらっしゃいますかね?」とでも言えばいいのか。

または、
「飲み会の幹事を任されたときに『今日は仕事のことは忘れてみんなで盛り上がりましょー!』という社内用メールを、納期が遅れて怒っている取引先にまでメール送信してしまい、後日土下座したというホームラン級のバカはいますか?」って完全に悪口ではないか。悪い人じゃないんだよ。ちょっと、うっかりさんなだけで。

しかし、本当になんと呼べばいいのか難しいなあ。

▼奥さんは奥さんで、ダンナさんのことをなんと呼ぶのか問題は存在する。夫というのがとりあえずの正解だとは思う。ただかなり固い感じはする。主人といえば従属を思わせるような、そうでもないようなちょっと微妙なところではある。ダンナはある程度親しい間柄なら問題はないが正式な場には使えない。統一した何かがあると便利である。

ちなみにわたしが電話した奥さんは「会社の人から電話ー‥‥、ちょっとー‥‥、オイッ!」と呼んでいた。それが正解でもいいです。

▼話は少し変わりますが新婚さんが相手のことを呼ぶのを聞くのはいいものです。お互いにまだ呼ぶことになれてなくて「うちのダンナが」とか「嫁が」などと照れながら言っている。

この前、結婚から五年たった友人に会いました。新婚当時は、見ているこちらが恥ずかしくなるような仲の良いカップルでした。彼は彼女のことを「天使はいた!」などと言っていたが現在では「天敵がいた。家にいた」と言っている。

そして奥さんは彼のことを給料ヤスオと呼んでいます。がんばれヤスオ、負けるなヤスオ。
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