玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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滝ブランコ

▼滝ブランコ

ブランコを漕ぐ人のスピードを計算し、水に濡れない仕組みになっているそうです。楽しそうでいいよねー。やってみたい。

今「たのしそう」って打ち込んだら「他の死そう」って出た。呪われとる!このブログは呪われとる!ここを見た皆さんは、免許証の写真が犯罪者顔に写る呪いにかかりました。今後、免許更新のたびにガッカリせよ!

▼たまには心温まる話でも書きたいですねえ。何かないものか。

これはわたしが小学校高学年の頃の話です。そのクラスには不登校の女の子が一人いました。一緒のクラスになってから数えるほどしか見たことがなかった。

ある日、彼女がひょっこり教室に来た。三時間目か四時間目ぐらいだったと思う。わたしはべつになんとも思わなかったし、周りも特になんの変化もなかった。ただ担任の女性教師はとても喜んでいた。彼女は五十歳ぐらいなのに背はもうすでに大きく曲がっており遠くから見ると老婆のようだった。先生がそんなにはしゃいでいるのを見るのは珍しく、その姿が滑稽で印象に残っている。

やはり自分のクラスに不登校の生徒がいるのは、教師の側からするといろいろあるのだろう。生徒が心配なのはもちろんだが自分の評価にも繋がるのだから。周りはともかく、先生が舞い上がってしまって「今日はAさん(不登校の子)が来たから、授業はやめにしてレクリエーションをやりましょう」などと言う。Aさんにしてみると特別扱いされているようで負担なのではないかと気になった。

で、Aさんだけどなぜか教室に黒猫を抱いてきたのだ。先生はそのことには何も触れない。普通だったら、猫を家に置いてからもう一度来なさいと言うべきだろう。Aさんは何事もなかったように席に着き、みんなで何をやりたいか話し合うことになった。みな授業がつぶれたのが嬉しくてざわついていたが、何をやるかはなかなか決まらない。そこで先生が立ち上がり、しゃがれた声で言った。

「そうだ。みんなで猫を使った遊びをやりましょう」

クラスは一瞬静まりかえって、わたしはAさんのほうを見た。Aさんは困惑し、おびえたような表情で猫を抱きしめていた。先生がなぜ突然そんなことを口走ったのかわからない。一瞬の静けさのあとクラスは元のざわめきを取り戻し、先生の提案は無視された。結局、ドッジボールか何かをやったのだと思う。

先生は何かと言い間違えたのかもしれないが、間違えるにしても「猫を使った」という言葉に得体の知れない不気味さを感じた。言い間違いには、その深層心理にある欲望が現れると言ったのはフロイトだったろうか。この先生にまともではないものを感じて怖くなった。それから先生がますます苦手になってしまった。

Aさんは中学では普通に登校していた。Aさんと一緒のクラスになったこともあったが、そのときのことを話したことはない。ひょっとしてわたしの聞き違いではなかったか確認してみたい気もする。あの日の先生の言葉はなんだったのだろうか。わたしの心に決して落ちないシミのように残り、ふとしたときに思い出す。

はい、皆さんにモヤモヤしてもらったところで今日は終わり終わり!心温まる話でしたねー。
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