玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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松花堂弁当

▼昼、忙しそうにしていたら隣席のTさんが気を遣ってくれた。昼食に出た帰りに何か買ってきてくれるという。忙しそうにしてみるものである。何がいいか訊かれた。

わたし:おいしそうなやつ。


Tさん:え、そんな抽象的な。洋か和か、肉か魚か、そういうのあります?

わ:Tさんがおいしそう、と思うのでいいよ。Tさんのセンスで。


T:そんなこと言ってマズかったら文句言うんでしょ。

わ:うん。「こういうのおいしいって思って買ってくるんだ~。へー。おい、みんなちょっと見てくれ!これがTさんがおいしいと思って買ってきた弁当だ!」って集合かける。

T:どんだけ性格悪いんですか。

わ:おいしくなくていいから買ってきてー。珍しいやつ。

T:珍しい弁当って言われても‥‥。松花堂弁当とかですか?

わ:松花堂って弁当にしきりがあるやつ?ミニ懐石みたいな。

T:そう。

わ:うーん、しかし、あれは弁当屋のプライドを考えるとどうなのか。

T:え?

わ:だって松花堂ってところが最初に始めたんじゃないの?

T:あ~、そうかも。それが評判良くて他の店がマネしたのかなあ。

わ:でしょ!そうすると我々弁当屋としては、よその店名が付いた弁当を販売するってのはちょっとどうかと思うんですよ。松花堂の宣伝をしてしまってるし。弁当屋のプライドにかけてそれはできない。

T:ここ弁当屋じゃないですけど。

わ:だからね、お客さんが「松花堂弁当ください」って言っても断固とした態度をとるべきだと思う。我々弁当屋としては。

T:はあ?

わ:松花堂弁当という名前のメニューを置いたら負けだと思う。松花堂のやつらの思う壺なので。あいつらのほくそ笑む顔が目に浮かぶわ。業界最大手だからって調子に乗りおって。

T:でも、メニューとしては置くんですよね?

わ:そうだよ。

T:じゃあ、どうするの?

わ:ちょっと買いにきてみなさい。

T:はあ‥‥。すみませーん、この松花堂弁当ひとつください。

わ:あ、それね。はい、元祖松花堂弁当ひとつね。かしこまりました。

T:結局「松花堂」って言っちゃってますけど。

わ:くそーっ!松花堂のやつらめ!どこまでも汚いマネを!

T:バカなんですか?

わ:もう一回チャンスをください。

T:はいはい。じゃあ、松花堂弁当ください。

わ:はい、九分割したやつね。ありがとうございます。


T:変な名前。言いにくいよ。

わ:だって九分割してるじゃん。これは今商標登録したほうがいいな!これもしばらくたつと「元祖九分割したやつ」とか、マネされる恐れがあるよ。うん。松花堂のやつらはそれぐらいやる。

T:どこもやりませんて。で、結局お昼はなに食べるんですか。九分割したやつでいい?

わ:いや、松花堂弁当なんてふつうの弁当屋にないからなあ。


T:あ、松花堂認めた。弁当屋のプライドがない。

わ:ここIT企業だからねえ。


T:じゃあ、唐揚げ弁当ね。

わ:はい。

という遊びをやりました。

▼ノートパソコンのThinkPad松花堂弁当の弁当箱をコンセプトにして開発されたそうです。ためになるブログだなあ!
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