ルド and クルシ
2008年 / メキシコ / 監督:カルロス・キュアロン / コメディ
【あらすじ】
バナナ園で働くルド(ガエル・ガルシア・ベルナル、写真右)とクルシ(ディエゴ・ルナ、左)の兄弟。週末の草サッカーでスカウトされ、あれよあれよという間に国を代表するサッカー選手に。真ん中のヒゲの胡散臭い人はスカウトのバトゥータ(ギレルモ・フランチェラ)。見た目のままの胡散臭い人です。でも、やり手。
【感想】ネタばれしてません。
ハリウッド映画というのは、もうだいたいわかっていると思うんです。文化の違いにそれほど驚くこともない。しかし、メキシコというのはよくわからない。えーと、これはこのまま信じて大丈夫でしょうか。
ラテンの血というやつか。家族愛、女たらし、ギャンブル狂い、サッカー大好き!楽しくなるクスリもやっちゃうよ!わたしのメキシコに対するイメージは大丈夫なのか。怒られないか。あくまでこの映画では、こんなふうということで。
兄弟で怒鳴り合いのケンカをし、それでもお互いを気にかけている。兄のルドは弟の悪口を散々言っていたくせに、妻から「バカの弟」と言われると「弟をバカって言うな!」と怒る。あんた、さっき弟にもっとひどいこと言ってたけどな。弟をバカにしていいのは俺だけ!という、そういう兄弟愛なのでしょうか。ちょっと微笑ましい。
弟のクルシは、兄より先に評価されてプロのサッカーチームに入る。しかし、兄のことを気に掛けており、兄もプロチームに入れるようにスカウトに根回しをする。ケンカ別れした二人が再会したときも、格別なにもない。「おう」という軽い挨拶を交わし、二人で晩御飯を作り出す。そういうのいいですね。「おまえなんか失敗しろ!バーカ!」みたいな別れ方だったのに。あんたら、ほんとにどういう‥‥。
メキシコ人というのは欲望に忠実というか、日本人よりも人生を楽しんでいるように見える。わたしなどは手元にちょっとお金があると、定期を組みだすからな。たいして金利も違わないのに、どこの銀行が得だとか、面白くもなんともない話である。お金ってのは使うためにあるんだぜー!という姿勢が清々しい。
兄はギャンブル狂いなので、サッカーで活躍するも一文無しに。ちょっと豪快につかいすぎではないか。弟に借りようと、それとなくお金について聞いてみると、弟も「なに?俺は女と付き合ってんだぜ!貯金なんかあるわけねー!」という。なにその理屈、わかりません!
江戸っ子は宵越しのゼニは持たねぇ、なんてことを申しましたが、それ以上の浪費っぷり。マフィアから「次の試合までに全額返さないと、おまえ消すから」って言われる。江戸っ子でも、もうちょっと考えてお金つかうよ。
まあ、なんだかいろいろ熱いのである。ファンも熱い。「おまえ、腑抜けたプレーしやがって!次、あんなプレーしたらぶちのめすからな!おまえの家も遊び場もわかってんだ!」と選手を脅す。そのくせ「ところで、サインちょーだい」と言ってくるのがすごい。え、なに、サインいるの。そんな態度で?ってなる。いろいろ熱い人たちであるよ。
けっこうモラル的にどうなんだってシーンが出てくるんですよね。監督にお金を10%上げるからこの選手を使えとか、賭けサッカーでわざと負けろとか。でも、それもこれも深刻な感じではなくてカラッとしてる。コメディタッチの作品だからというのもそうなんだけど、「人生は楽しむためにあるんだ!そのためにはある程度は何をやってもいいんだ。うまくいかなくても気にすんな!」そんなラテンの血がメキシコ人には流れているような気がした。