玉川上水日記

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映画「冷たい熱帯魚」

冷たい熱帯魚
2010年 / 日本 / 監督:園 子温 / スプラッター、コメディ


ゴチャゴチャ言うやつは、ボデーを透明にしたらええんや!
【あらすじ】
小さな熱帯魚店を営む社本(吹越満)。死別した前妻の娘と後妻の折り合いが悪く、家庭はギクシャクしている。ある日、娘は万引きで捕まってしまう。スーパーに呼び出されて平謝りする社本だったが、その窮地を救ってくれたのが人の良さそうな村田(でんでん)だった。そこから村田につけこまれ犯罪の片棒を担がされていく。

【感想】ラストには触れてません。
「R18」というラベルが貼ってある作品があります。そういった作品でも、特に過激な描写があるわけでもなく「なんだか怒ってくる人がいるから、予防的に貼っとくか」ぐらいの感じで貼られているものもある。この作品は違います。R18というか、R80でいいね!80歳から解禁。PTAの人が「こんな作品、子どもに観せられません!」て言ったら、わたしも「そうだ、そうだー!」って応援する。これ、ほんとすごいもの。

金、性欲、暴力、欲望一直線の作品です。

世の中には倫理観が欠落した人が実際にいます。わたしも何人かあったことがある。それがですね、このでんでん演じる村田(写真左)に本当に似ているんですよね。明るくて、頭の回転も早く、冗談をいって人の懐にはいり、人を操るのもうまい。

ただ、その人にとって相手に親しげに接するのは利用価値があるときに限られる。村田は、自分にとって利用価値がなくなり、害を及ぼしそうな相手は「透明」にしてしまう。透明にするというのは殺してバラバラにし、この世から跡形もなく消すということです。「ボデーを透明にしたから大丈夫や!」というセリフは映画中に何度も出てきます。ちょっと面白い。

この村田の観察力がすごい。社本の家庭の問題を一目で見抜いて指摘し、社本の家族を思い通りに操っていく。村田は巨大な熱帯魚店を経営している。そこで従業員の若い女性に、タンクトップにホットパンツというきわどいコスチュームで接客させている。それも村田の人間観察の鋭さであり、人間観の表れだろう。

この映画はラストにいろいろ理屈が付けられておりますが、わたしはそこんところはまったくわからなかった。むしろ、クレームがついたときに「いやこれは生きていくことの痛みを描いた芸術的な側面もあり‥‥」と、逃げやすいように付けたのではないかと勘繰ってしまった。なので、わたしは「世の中には、こんな悪い人がいるんでっせ!」というスプラッターコメディとして楽しみました。

埼玉愛犬家連続殺人事件が作品の元になっており、死体をバラバラにする描写がすさまじい。わたしは元からそういったのが苦手ですが、これはちょっと気持ちが悪くなってしまった。だが、随所に挟まれるギャグがおかしい。村田がバラバラにした人間を焼くシーンがある。その骨をドラム缶に投げ込むとき、骨に「元気でなー!」と叫ぶのは笑ってしまった。自分で殺したくせに、元気でって。頭おかしすぎる。

でんでんと、その相棒の黒沢あすかの狂気がすごい。人の体をバラバラにしながら冗談を言い合うところの狂い方とか。一人でこっそり観るといいと思います。これを「面白い!」というと人格が疑われそうで怖い。そ、そ、そんなやつらは透明にしてやる!


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