玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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のろけ話

▼お世話になっている会社の飲み会。新婚のYさんという男性の話を聞く。「うちの嫁が、うちの嫁が」と、ずっとのろけ話をしている。わたしは、そういう話を聞くのが嫌いではないものの2時間ぐらい聞いていたら、さすがにもういいやとなった。

みな、Yさんの話に入らないようにしている。わたしを犠牲にして、そういうことか!と気づいたがもう遅いのだった。Yさんが離してくれない。職場ではもうみんな聞いてくれないらしく、わたしだけに熱心に話してくれるのだった。ははははは。

Yさんの奥さんはお茶目な性格らしい。彼が帰るときに、晩御飯は何かとメールすると「今日は残り物」と返してくる日がある。するとYさんは、帰り道にラーメンなどを食べてしまうらしい。で、家に帰ってみれば「実はウナギでしたー!」と、ダンナさんを喜ばせたいらしいのだ。残り物とご馳走の差で、びっくりさせてやろうという。

「ね!これ、すごくかわいくないですか?」と言われるものの、この「かわいくないですか?」をもうすでに10回以上聞いているので「ない。どうでもいい。家に帰りたい」と返したいが、わたしも大人なのでそういうことはしない。死んだ魚のような目でうなづくだけである。もうわたしの目は濁りきっておる。

「なんだか僕たちって、時計と髪飾りの童話に出てくる夫婦に似てると思うんですよね」と言っていた。

なんのことかと思っていたら、オー・ヘンリーの短編「賢者の贈り物」が思い当たった。貧しい夫婦が、お互いにクリスマスプレゼントを贈る話である。夫は懐中時計を売ってクシを買い、妻は美しい髪を売って夫の時計に合う鎖を買う。結局、お互いの贈り物は無駄になってしまうが、思いやりが伝わってよかったみたいな話である。

Yさんは、この夫婦と自分たちが似ていると言った。しかし、彼は奥さんに隠れてラーメンを食べているし、この話とはまったく違うので「なに言ってんだ、全然違うわ。アホか」と申し上げた。
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