玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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おにぎり

▼オリンピックも終わってしまった。今回も代表になれなかった。小学校の頃、先生が「誰にも負けない特技を持ちなさい」と言っていた。当時は世界人口が50億ぐらいだったが、幼心にも「50億人がそれぞれ一番になれる特技を持つって有り得るのだろうか?そんなに特技の種類ってあるのかな?いや、ない!だから無理!」と早めに悟っていた。

そして今、このようなポンコツが出来上がりました。強いていうなら、あきらめはかなり早い。日本代表レベル。

▼会社の近くでお昼を食べられるところが休みである。しかたなくおにぎりを3つ作っていった。周りに人が集まってきて「弁当男子ですね」と、からかわれた。暇人どもめ。

あの○○男子とか女子とか、どうもそういう言い方が気に入らぬ。逆襲するために、わたしからも積極的に名付けていくことにした。部長を「スーパーパワハラ男子」、隣席のTさんを「美容院行きたいから会社休む女子」、卑屈くんを「仮病で家でドラクエ男子」と呼んだ。

本当のことなのに反応が薄い。人は本当のことをいうと聞えないフリをします。嫌われ男子は、そう思いました。

▼昼はおにぎり。おにぎりは美味しいなあ。なんで握っただけで美味しくなるのだろうか。

小学校の頃、遠足のときに母はよくおにぎりを握ってくれた。母は不器用なので、おにぎりを三角に握ることなどできない。だからいつも巨大な丸いおにぎりが3つ入っている。海苔が巻かれているので砲丸のようだった。おかずもない。友人の弁当箱に小さな俵むすびがいくつも入っているのを見て、カルチャーショックを受けた。

遠足といえばやはり昼が楽しみである。その日も、ようやっと山頂にたどりつき、シートに腰をおろして弁当を広げた。みな、弁当を食べだすがわたしの弁当はおにぎりがギュッと詰まってるせいか、なかなかふたが開かない。思いっきり「えいっ」とばかりにふたを開けた。すると、弁当のふたに張り付いていたおにぎりが弧を描いて宙を飛んだ。着地したおにぎりは、ゴロゴロゴロー!っと、ものすごい勢いで地面を転がっていき視界から消えた。

あまりのことに、ほとんど気絶しかけた。一秒で昼飯がなくなってしまった。死のうと思いましたね。わりとすぐに死にたがる。周囲から笑いが起こったものの、わたしが死にそうな顔をしているので同情したのか、友人たちがオカズを一品ずつくれた。あのときの友情をわたしは忘れておりません。

だから、Tくんが帰りのバスでウンコをもらしたことも、そんなに言わないようにしている。