玉川上水日記

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映画「北北西に進路を取れ」

北北西に進路を取れ
1959年 / アメリカ / 監督:アルフレッド・ヒッチコック / サスペンス

【あらすじ】
広告業者のロジャー・ソーンヒルケイリー・グラント)がスパイと間違われて殺されそうになって逃げます。逃亡を助けてくれる謎の美女イヴ(エヴァ・マリー・セイント)もいろいろがんばる。

【感想】 ネタバレしてません。
たまには古典もいいんじゃないかと、ヒッチコック監督作品を借りました。いやあ、ヒッチはなかなかやりますなあ。スタッフは監督のことを「ヒッチ」と呼んでたよ。わたしもこれからはヒッチと呼びたい。ヒッチと呼んで、通ぶりたい。

公開年が1959年です。映画が娯楽の王様だった時代の作品なのでしょう。ですがやはり今の作品と比べると、シナリオ、迫力ともに劣っているというのが正直なところ。悪の組織の仕事が雑すぎてびっくり。もうちょっとちゃんとしたほうがいいよと心配した。がんばれ、悪の組織。

この頃は当然CGもないわけですが、それでも工夫をして迫力あるシーンを撮影しています。

映画のジャケットなどにもよく使われるこのシーン。この後には飛行機が地面スレスレに迫ってきて、主人公は地面に身を投げ出してかろうじて避けます。メイキングでいかにしてそのシーンを撮ったか、語られていました。

ケイリー・グラントを危険にさらすことはできないので、まず飛行機が迫ってくるシーンを別に撮影します。次に、その迫り来る飛行機のシーンを大きなスクリーンで再生し、ケイリー・グラントはスクリーンの前で逃げている演技をする。その背後の飛行機とケイリー・グラントを合わせて撮影して、迫力あるシーンが完成。カメラはスクリーンをはみ出ないように撮影しているわけです。その光景を外側から見ると、かなり間抜けでした。間抜けとか言うな。工夫じゃ。

やはりこの時代の撮影の工夫は面白い。ちょっと脱線しますが、黒澤映画でえんえんと森の中を馬で疾走するシーンがありました。疾走する馬を横から撮るときは、その横にレールを敷いて疾走する馬の横をカメラが併走します。しかし、長い距離であるのと、森を切り拓いてそれを行うのはかなり難しい。

そこで、馬を直線ではなく円状に走らせ、カメラが円の中心にいてぐるぐると回りながら馬を撮影するという方法をとったそうです。このやり方なら、レールを作る必要もありません。必要なだけ円を周ってもらうだけで済む。なきゃないなりの工夫がいいですね。話が逸れた。

で、この場面は何もない田舎の畑で撮られています。べつに飛行機で殺さんでも、普通に車で暗殺者がやってきて殺したほうが確実なんですが、わざわざ飛行機で殺しにきます。そんで失敗する。思いついちゃったんだろーなー。「飛行機でやったら迫力あるんじゃね?」とか。当時の観客はやはり驚いただろうし、名シーンとして残っているので成功だったのでしょう。必然性はまったくない。やりたいからやりましたという姿勢がすてき。ラストのラシュモア山のシーンもそうですね。

DVDでは、特典のメイキングの中で撮影の工夫や、ケイリー・グラントの人柄なども語られていました。サインを求められ、それを1枚15セントで売っていたとか、スタッフと食事をして支払の段になるとどこかへ消えてしまうとチクられていた。ケイリーさん、ひょっとしてスタッフに嫌われてるんじゃないのか。いろいろ攻撃されていて面白い。

謎の美女イヴ(エヴァ・マリー・セイント)も知的で愛らしい。品があります。あんまりうるさいこと言わずに観て当時の華やかな雰囲気を楽しめばいいのだと思います。古きよき時代の大作ですね。ヒッチも2ヶ所にこっそり出演しているので、探してみるといいかも。
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