玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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運転すると性格が変わる人

▼車のハンドルを握ると性格が変わる人がいる。今度から一緒に仕事をすることになったOさんという男性なのですが、運転中はえらく口が悪くなるのです。ふだんは草食動物のようにおとなしいのにね。あ、でも草食動物ってのは人間がつけている区分だから、草食動物も食べる物がなけりゃ肉も食べるんですよね。

何を言ってんのかわかんなくなった。で、Oさんが草食動物でって話でしたっけ。ええと、車に乗ると人が変わるということか。彼は30歳ぐらいの男性です。ふだんの物腰はとても柔らかいし、わたしのほうが年上とあっていろいろと立ててくれもする。

その日は打ち合わせ先まで彼に車で送ってもらい、その道すがら、車内で仕事の手順を確認していた。前の車が遅いと舌打ちするのはまだいいんですよ。そういう人はわりといるから。おじさんが車道の左側を自転車でふらふらと走っていた。たしかにちょっと邪魔だし気になる。それで、そのおじさんを罵るのだ。もちろん車の窓は閉まっているから、おじさんに聞こえることはない。

「ジジイ、どけよオイッ‥‥邪魔なんだよコノヤロー!‥‥、それでですね、問題ないようでしたらメールで送りましたファイルの手順で進めたいのですがよろしいですか?」

「うん‥‥。それでいいんじゃないかな」

「それと先方への報告の頻度なんですが、三日に一度ぐらいで‥‥ババア、オイッ、いっぺんひくぞテメー!‥‥ぐらいでどうでしょう」

「はい‥‥。三日に一度で十分だと思います‥‥」

「‥‥なんてね」

わたしが引いているのに気づいたのか、かわいく「なんてね」って言われても。アホか、思わずこっちが敬語使うわ。使わさせていただきます。

これは運転しているときだけこういう人なのかなあ。たとえば日常生活で彼にとって面白くないことが起こったときに、この暴力性が発揮されることがあるのだろうか。怖い。

それからは彼と会話せずに、携帯をいじりたおしていた。さも緊急の用事があるように、過去に来た迷惑メールを読みまくった。至急800万お受け取りください!というメールをスミからスミまで読んだ。次からは電車で行きます。
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